発行:2025年1月24日
※本資料は、千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会の活動状況と参考情報を発信するものです。
目次
1.第2回共同研究会 活動報告
2.EBPM(第3回)
3.セキュリティ事故解説
4.自治体におけるAI応答システム(第3回)
5.今後の予定案内
2024年12月18日水曜14時半より、R6年度第2回「自治体DX共同研究会」をオンライン開催しました。自治体からは22市町村30名の方に参加頂き、全体で49名(事務局含む)でした。
R6年度はRPAツールの利活用に着目しており、第2回は代表的なRPAツールについて、操作性を含めた紹介を各ベンダー様にご協力頂きました。
・ BizRobo!(株式会社大崎コンピュータエンヂニアリング様)
・ WinActor(株式会社ドコモビジネスソリューションズ様)
・ UiPath(NECソリューションイノベータ株式会社様)
今回のツール紹介は、Webサイト上に公表されているデータを収集してExcelを用いて加工や集計を行い関係者にメール送付する、という共通テーマでの実装および実行操作をデモして頂きました。各ツール30分という短時間での紹介でしたので、少々バタバタ感があり、その場での質疑応答が出来なかったことが反省点で残りましたが、ツールの操作イメージは把握しやすかったのではないかと思います。
なお、RPAツールというとMicrosoft PowerAutomateが思い浮かぶと思いますが、PowerPlatformというローコード開発プラットフォームの中の1機能で、3ツールとは位置づけが少々違いましたので、また別の機会に検討することにしました。
1.始めに
内閣官房行政改革推進本部事務局発行の「EBPM ガイドブック Ver1.2 2023.4.3」を参照しながら、前回に引き続き、エビデンスについて、とくにその収集と処理についてご紹介します。
2.エビデンスの収集とは
EBPMを実践する上で、データ等のエビデンスは政策目的と政策手段のロジックを裏付ける根拠となります。 エビデンスを収集することで、政策の効果検証を行い、より効果的な政策手段を選択できるようになります。エビデンスの収集は不可欠である一方、その収集には、時間やコストがかかるため、どのようにエビデンスを収集するのかには、注意しなければなりません。
従って、収集の手順としては、下図1のように、まず、既存のデータ等のエビデンスの収集を行い、それでも足りない場合に、新規のデータ収集を行うのが鉄則です。また、収集する情報は、PICOの枠組み、政策手段の対象(Population)、政策手段の内容(Intervention)、政策手段の対象との比較対象(Comparison)、政策手段の成果目標(Outcome)に従って整理すると既存のエビデンスを整理しやすくなります。
表1に、データ等を収集する際に、有用なサイトを示しますので、ご利用ください。
表1.エビデンス収集に有用な窓口 | ||
サイト名 | URL他 | |
1 | 政府の統計窓口 | https://www.e-stat.go.jp/ |
2 |
経済・財政と暮らしの指標「見える化」データベース |
https://www5.cao.go.jp/keizaishimon/kaigi/special/reform/mieruka/index.html |
3 | 内閣府エビデンスシステム(e-CSTI) | https://e-csti.go.jp/ |
4 | CiNii Articles |
https://support.nii.ac.jp/ja/cia/cinii_articles 学協会刊行物・大学研究紀要・国立国会図書館の雑誌記事索引データベースなど、学術論文情報を検索の対象とする論文データベース・サービス |
5 | researchmap |
国立研究開発法人 科学技術振興機構が運営する、研究者が業績を管理・発信できるようにすることを目的とした、データベース型研究者総覧 |
6 | RESAS |
https://resas.go.jp/#/13/13101 地域経済分析システム |
エビデンスの収集に当たっては、以下の点にも留意してください。
・ 政策目的とロジックを明確化した上で、必要なデータを特定する
・ 政策実施の前段階から、データ収集計画を策定する
・ データの信頼性、妥当性、比較可能性などを考慮する
・ 個人情報保護法など、関連法規を遵守する
3.効果検証方法と選択基準
効果検証とは、政策の実施によって、アウトカムに本当に変化があったのかを検証することを指します。 効果検証を行うことで、政策効果の大きさを把握し、政策の改善や継続・中止の判断に役立てることができます。
効果検証においては、政策の実施とアウトカムの変化の間に因果関係があることを示す必要があります。しかし、前回、因果関係についてご説明したとおり、政策の実施以外の要因によってアウトカムが変化する可能性も考慮しなければなりません。このため、政策の実施以外の要因による影響を排除し、政策の効果を適切に測定することが重要です。
効果検証に用いる手法のうち、利用頻度の高い4 つの方法を以下にご紹介します。
1. ランダム化比較試験 (RCT):
対象者をランダムに2 つのグループ(介入群と対照群)に分け、介入群のみに政策を実施することで、
介入の効果を測定する方法
・ 最も精度の高い手法とされており、因果関係を明確に示すことができる
・ 倫理的な問題や実施コストの高さなどから、行政分野では適用が難しい場合が多い
2. 差の差分析:
政策の実施前後のアウトカムの変化を、政策の対象者と非対象者で比較することで、政策の効果を測定
する方法
・ RCT に比べて実施コストが低く、行政分野での適用例が多い
・ 比較対象の選定や政策以外の要因による影響の排除などが課題となる
3. 回帰分析:
複数の要因とアウトカムの関係を分析し、政策の効果を推定する方法
・ 入手しやすいデータを用いて分析できる
・ 因果関係を明確に示すためには、分析手法の工夫や適切なデータの収集が必要
4. 前後比較:
政策の実施前後のアウトカムの変化を比較することで、政策の効果を測定する方法
・ 最も簡便な手法
・ 政策以外の要因による影響を排除することが難しいため、因果関係を明確に示すことはできない
効果検証手法を選択する際には次の点を考慮するのを忘れないで下さい。
・ 政策の特性
・ 利用可能なデータ
・ 必要な精度
・ 費用対効果
今回は、データなどのエビデンスの収集方法、効果検証の手法についてご紹介しました。次回は、具体的な事例をご紹介します。
~メール送信時の小さなミスが招く大きなトラブル~
今回は、前回よりお伝えしているIPA(独立行政法人情報処理推進機構)から発行された「情報セキュリティ10 大脅威」から、不注意による情報漏洩についてお伝えします。
皆さんは、メールを送信する際に、宛先を「BCC」と「CC」どちらに設定していますでしょうか。「BCC」と「CC」、どちらもメールの宛先を設定する際に使うものですが、大きな違いがあります。
* BCC(Blind Carbon Copy): メールアドレスが他の受信者に表示されません。
* CC(Carbon Copy) : メールアドレスが他の受信者に表示されます。
2024 年12 月に、埼玉県朝霞市で、聴覚障害者の方々へのメール送信時に、誤って「CC」設定にしてしまい、全受信者のメールアドレスが互いに見えてしまうというトラブルが発生しました。
この事例のように、誤った宛先設定をしてしまうと、個人情報が漏えいするリスクが高まります。
なぜこのようなミスが起こるのか?
* BCC とCC の違いを理解していない
* 慌ててメールを送信しようとした
* メールテンプレートを使用していない
* 送信前に十分な確認をしていない
などが考えられます。
誤った宛先設定を防ぐための対策として、以下のような事項が考えられます。
・ BCC とCC の違いをしっかり理解する
BCC は、複数の相手に同じメールを送る際に、個々のメールアドレスを秘匿したい場合に使用するものです。CC は、複数の相手に同じメールを送る際に、全員に宛先を表示したい場合に使用するものです。
・メール送信時のダブルチェック手順を整備する
「間違いがないようにダブルチェックをしましょう」というのは、どこの自治体でも定められているルールかと思いますが、ダブルチェックの方法を工夫する必要があります。
例えば、To とCC、BCC にメールアドレスを正しく入れた後、その画面のスクリーンショット(PC 画面自体を写真のように画像データにすること)を撮り、そのファイルを同僚に送って確認してもらうのはいかがでしょうか。この方法だと、確認者は、メールを開き、添付ファイルを開いて、当該画像を確認する必要があるため、「確認してくれる?」と口頭で声をかけ、瞬間的にPC 画面を“チラ見”して確認するのに比べ、より確実に「見る」ことができるのではないでしょうか。
情報セキュリティ事故の半分以上は、人為的ミスが原因と言われています。人間は誰でもミスをするものですので、「ちゃんと確認しないのが悪い」では、ミスを減らすことはできません。確認の方法から工夫することもご検討ください。
AI応答システムとは、自治体の窓口業務や問い合わせ対応をAIが自動で行う仕組みのことです。最近では、生成AI技術によってこのシステムがさらに進化しています。生成AIは、より自然で柔軟な会話ができ、複雑な質問にも対応できるAIです。また、ファインチューニングという方法を用いることで、AIがその地域に特化した知識を持つ応答システムを構築できます。例えば、住民票や戸籍証明の手続き、ゴミ収集の情報に関する質問に自動で対応するシステムや、地域の観光案内、イベント情報を提供するシステム、さらには移住希望者向けの情報提供を強化したシステムが運用されています。地方の小規模自治体では、高齢者向けサービスに特化したAI応答システムが特に求められています。これにより、高齢者は行政サービスや福祉サービスに関する質問に迅速に答えてもらえるため、地域のサポート体制が強化されます。例えば、陸前高田市では震災後の高齢者ケアにAIを活用し、住民の安全と安心を支えています。
また、生成AIをファインチューニングした応答システムは、教育分野でも活用されています。東京都内の一部自治体では、学校の入学手続きや教育支援に関する質問に対応するAI応答システムが導入されています。親や生徒が入学手続きや奨学金について質問すると、AIが自治体ごとの手続きやスケジュールに合わせて的確な情報を提供するなど、教育現場での負担軽減が図られています。
なお、最近ではAIを自動で調整してくれるツールが登場しています。クラウドサービスの「Google Cloud AI Platform」は、AIモデルの構築、トレーニング、デプロイを一括して行えるプラットフォームです。その中に含まれる「AutoML」は、AIモデルをカスタマイズするためのサービスで、機械学習に関する専門知識が少なくても、簡単に既存のモデルを特定のニーズに合わせてファインチューニングすることができます。これらを利用すれば、難しい設定を自分で行わなくても、AIが自動で賢くなっていくため、AIの専門家がいなくても問題ありません。さらに、自治体が直接専門家を雇用しなくても、必要なときにだけ外部のプロに依頼することも可能です。こうした方法を使えば、自治体も生成AIを活用して住民の役に立つサービスを提供できるようになります。
生成AIの進化に伴い、自治体の自動応答システムは今後さらに高度化していくことが予想されます。まず、AIは地域固有の情報に精通し、住民のニーズや地域の課題にきめ細かく対応できるようになります。次に、外国人住民の増加に伴い、多言語対応が進むことが期待されます。生成AIが多言語に対応することで、住民は自分の母国語で行政サービスを受けることができ、コミュニケーションの障壁が低くなります。これにより、外国人住民もより円滑に自治体サービスを利用できるようになります。さらに、パーソナライズされた情報提供が可能になる点も重要です。生成AIは住民一人ひとりの属性や過去の問い合わせ履歴に基づいて、個別に最適化された情報を提供できるようになります。これにより、住民は必要な情報を素早く、的確に得られるようになります。
生成AIによる自動応答システムは、自治体における住民サービスの効率化と利便性向上に大きく貢献し、今後もその発展が期待されます。
今年度の共同研究会は3回目として下記内容を予定しています。
第3回共同研究会では、1)愛知県阿久比町様にご協力頂き、小規模自治体でのRPA 活用事例を、2)千葉県のデジタル化推進役である県庁総務部デジタル推進課様に取り組み事例を、そして、3)AI-OCR+RPA で、紙媒体のデータからデータ処理の自動化を進めている千葉市様に活用事例を紹介頂きます。日頃の疑問や課題解決のヒントになるような意見交換が出来ればと思います。
検討テーマに関心のある方は、千葉県DX 推進協議会の会員有無を問いませんので、気楽に参加ください。
第3回共同研究会 (オンライン) |
3月11日火曜 15:00~16:30 |
RPA活用事例紹介 ・小規模自治体での導入および運用事例 ・千葉県としての取り組み事例 ・RPA とAI-OCR を連携させた活用事例 |
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研究会開催の準備が整いましたら、メールにて連絡いたしますので「ちば電子申請サービス」から参加申し込みをお願いします。
下記はR3年度までの千葉県地域IT化推進協議会 ITレテラシ向上対策部会の活動として発行したメルマガをまとめたものです。参考にして下さい。なお、現在メルマガ発行は終了しています。
※本資料は共同研究会参加メンバーおよび協議会メンバーを対象に、千葉県が配信しております。
なお、これまで発行しました部会通信は、下記に掲載しております。ITリテラシ向上のための各種記事と合わせて参照ください。
https://chiba-it-literacy-bukai.jimdofree.com/dx通信/
発行:千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会
部会長:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 浅井 鉄夫
事務局:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 加野 隆司
電話 080-3425-8779 電子メール t.kano2005@gmail.com
監事 :千葉県DX推進協議会 事務局 千葉県総務部 デジタル戦略課 浅川 聡
次回発行予定 2025年3月中旬