アプリストア

アプリケーションストア(application store)を略して、アプリストアと呼びます。

アプリストアとは、主にスマートフォンをはじめとするモバイル端末で利用できる専用のアプリケーション(モバイルアプリ)を提供するための配信チャネルです。

 

アプリストアには多種多様なモバイルアプリが登録されていて、通常はインターネットを介してモバイル端末にダウンロードして利用します。

アプリストアには有償のアプリ、無償のアプリ、体験版アプリがあります。

主要なアプリストアには、非常に多くの多種多様なアプリが登録されていますので、充実した検索・閲覧機能が提供されています。

 

モバイルアプリは基本的にプラットフォーム(モバイル端末のOS等)に依存するため、プラットフォーム別に独自のアプリストアが存在します。また、このような自社提供のアプリストアで配信されていない特定のアプリの入手を望むユーザーのために、サードパーティのアプリストアも存在します。

 

アップル社が、2008年7月、「App Sotre」(アップストア)と名付けて、アップル社およびサードパーティが開発したiPhone向けのアプリケーションソフトウェアの配信サービスを開始したことがアプリストアの始まりです。

英語のapplication storeを略したものがapp storeですので、この用語は一般的なものなのですが、アップル社は自社のこのサービスモデルを守る意味で、2008年に「App Store」の商標登録申請を行い、以後、商標権を主張しています。そのため、グーグル社やマイクロソフト社などが提供する同種のサービスの名称は、app storeという用語を避けたものになっています。

 

【便利知識】

「App  Store」を「Apple Store」(アップルストア)の略と誤解している方もいるようですが、「Apple Store」はアップル社が運営し、アップル社の製品を販売する実店舗・オンラインストアのことです。

 

アプリストア誕生の背景

アプリストアが登場するまでは、パソコンなどで動くアプリケーションソフトウェア(以下、アプリ)は、予めパソコンにインストール済みであるか、そのアプリの開発ベンダーによって、CD-ROMなどの形かオンラインで、販売・配布されることが一般的でした。

例えば、WordやExcelの入っていないパソコンにそれらを導入するには、家電量販店などでWordやExcelのソフトウェアパッケージを購入して、CD-ROMなどでインストールすることが必要でした。

また、スマートフォンが登場する前の多機能な携帯電話(フィーチャーフォン)のアプリは、NTTドコモが運営していた「ドコモストア(当時)」のiモードの携帯電話向けの配信サービスを除いては、全て予め内蔵されていました。

 

個々の開発ベンダー自身が開発したアプリの販売・配布することは、販売チャネルの確保や販売・配布に関わる労力という開発ベンダー側の負担に加え、端末メーカーやOSの開発ベンダー(これらをプラットフォーマーと呼びます)が関与しないところで、サードパーティが開発したアプリが導入されることによって端末の動作がおかしくなる、という不安もありました。

 

初期のiPhoneは全てアップル社が開発したアプリを内蔵しているだけでしたが、まもなく、iPhone人気に目を付けたサードパーティが独自アプリを独自の方法で販売・配布を始めたことから、アップル社は「App Store」サービスを開始したのです。その狙いは、サードパーティが開発したアプリをアップル社が検証してiPhoneの品質・性能を保つこと、サードパーティでのアプリ開発を促進することでiPhoneの価値を高めること、「App Store」を介して販売することへの手数料収入が見込めること、などと推測されます。

特に、ゲームアプリなどのアプリ内で課金ができる仕組みと決済サービスが提供されてからは、「App Store」はアップル社の大きな収入源のひとつとなっているようです。

他のスマートフォン用のプラットフォーマーもすぐに同種のサービスの提供を始めました。

 

アプリストアは、開発ベンダーにとっては、販売チャネルが確立できること、販売・配布・アップデートに関わる労力が不要になること、顧客のコメントやレビューが拾えること、などからより品質の高めたアプリ開発に注力できるメリットがあります。ライバル製品よりも優位であれば販売機会が急激に増すことも期待できます。

ユーザーにとっては、簡便に好きなアプリを選んで導入できること、広告収入に期待して無償提供のアプリが少なくないこと、また最新のバージョンへのアップデートが容易であること、などのメリットがあります。

 

現在では、モバイルアプリ用のアプリストアだけでなく、Windows OSやmacOSなど、パソコン向けのアプリ配信のアプリストアも開設されていて、サードパーティが開発したアプリも含めて、ほとんどのアプリは、いずれかのアプリストアを介して入手できるようになっています。

 

アプリストアで提供されるもの

上述の通り、アプリストアはモバイルアプリの販売・配布のためのものですが、近年、主要なアプリサイトはいずれも、映画・ビデオ・音楽・書籍などのデジタルコンテンツの提供サービスを兼ね備えたものになっています。

 

アプリ

OSとアプリ」のページでも触れたように、アプリには様々なものがありますが、その殆どは、いずれかのアプリストアの配信サービスを利用して、入手可能になっています。

 

アプリストアに特徴的なのは、ゲーム系のアプリが極めて多く、それがアプリストアの大きな収入源になっていることです。

 

ちなみに、statistaの統計によれば、2021年3月現在で、アップル社の「App Store」では、ゲーム系のアプリが21%以上となっていて、カテゴリー別では最も高いシェアを占めています。(右図参照)

「App Store」内のアプリのカテゴリー別シェア
「App Store」内のアプリのカテゴリー別シェア

アプリ以外

アプリストアの中には、アプリ以外のデジタルコンテンツの配信サービスも統合しているところがあります。グーグル社の「Google Play」がその典型です。一方、アップル社は、アプリの配信は「App Store」「Mac App Store」、デジタルコンテンツの配信は「iTune Store」と分けています。

 

デジタルコンテンツは、大きく、ゲーム系、音楽系、映像系(映画、ビデオ、テレビ配信)、ニュース系、電子書籍系に分けられます。ゲームはアプリの一種ですが、デジタルコンテンツの一種でもあります。

 

ここでは、「Google Play」の例を紹介します。

「Playストア」アイコンをクリックすると、右図の例のように、まず、おすすめの記事、ゲームなどが表示されます。

 

上部の検索窓にキーワードを入れて、アプリやデジタルコンテンツをキーワード検索できます。

トップ画面では「アプリとゲーム」が検索対象となっています。下段メニューの「ゲーム」、「アプリ」、「書籍」、「映画&TV」のいずれかを選ぶと、検索対象がそれぞれの分野に絞られます。(「ゲーム」と「アプリ」は同じ分野として扱われています。)

 

検索窓でのキーワード検索のほか、上段のメニューと表示される一覧を辿るなどして、配信対象のコンテンツを閲覧することもできます。

 

なお、グーグル社は、デジタルコンテンツの「音楽」に関しては「Google Playミュージック」として、また、ニュースに関しては「Googleニュース」として、分離しています。

 

「Playストア」のトップ画面例
「Playストア」のトップ画面例
「Playストア」の「映画&TV」の画面例
「Playストア」の「映画&TV」の画面例

主なアプリストア

App Store

前述の通り、「App Store」はアップル社が運営する主にiPhone、iPad、iPod touchなどのiOS搭載のスマートフォン・タブレット端末向けのモバイルアプリ配信サービスです。

アップル社にはmacOSを搭載したMacintoshパソコンなどに対する類似のサービスがありますが、こちらは 「Mac App Store」という名称で別に運営されています。

 

iPhoneやiPadなどには予め「App Store」アプリが搭載されていて、ユーザーはこのアプリを通じて、「App Store」から様々なアプリをダウンロードできるようになっています。

 

アップル社は、音楽、映画などのデジタルコンテンツの配信については、「iTunes Store」の名称でサービスを展開しています。「iTunes Store」では、デジタルコンテンツだけでなく、iPhoneなどのためのモバイルアプリの配信も取り扱っています。このサービスは、「App Store」アプリを介した配信と区別する意味で、「iTunes App Store」と呼ばれることがあります。

 

2008年7月、iPhone 3G発売とともに、500本のアプリの提供が開始されて以来、アップル社の厳しい審査にも関わらず、年々提供本数が増えており、statisiaの統計によれば、2020年第4四半期では約210万本に達しています。

 

Google Play (Playストア)

「Google Play」は、グーグル社が運営する主にAndroid OS搭載のスマートフォン・タブレット端末向けのモバイルアプリ配信サービスです。現在は、グーグル社が開発したChrome OSを搭載するパソコン(Chromebookなど)用のアプリのほか、映画・音楽・書籍などの様々なデジタルコンテンツも、Google Playを介して配信されています。

 

グーグル社は2008年、アップル社の「App Store」開始から数ヶ月遅れで、「Android Market」を開始しました。2012年に「Google Play」に名称を変更し、「Google eBookstore」「Google Play Music」といったサービスを「Google Play」に統合し、現在に至っています。

 

Android OSの搭載スマートフォン・タブレット端末には予め「Play ストア」アプリが搭載されていて、ユーザーはこのアプリを通じて、「Google Play」から様々なアプリやデジタルコンテンツをダウンロードできるようになっています。正式名称である「Google Play」よりも「Playストア」あるいは「Google Playストア」と呼ばれることの方が多いようです。

 

statistaの統計によれば、Google Playで提供されているアプリの本数は、2020年12月時点で約295万本となっています。

その他の主なアプリストア

Microsoft Store

Microsoft Store(旧:Windows ストア)は、Windows OS向けに提供されるアプリストアです。Windows OSベースのスマートフォン向けの場合は「Windows Phoneストア」と呼ばれます。

「Microsoft Store」は、マイクロソフト社の製品のオンランストアとしての機能も有しています。

 

「Google Play」、「App Store」に次ぐ大きさのアプリストアで、statistaの統計によれば、2020年第4四半期で約67万本のアプリが登録されています。

 

Amazon Appstore

アマゾン社が2011年に、Fire OS(android OSからの派生OSの一種)で動く電子書籍リーダーのKindle Fireタブレット端末に向けたアプリストアとして展開を開始し、その後、android OS搭載のスマートフォン向けのアプリの配信も行っているものです。

アプリ開発者にとって、「Google Play」で販売するよりも、お得感があることから、登録本数は年々増えています。statistaの統計によれば、2020年第4四半期で約46万本のアプリが登録されています。

 

Mac App Store

アップル社が運営するmacOS向けアプリケーションの配信サービスで、サードパーティが開発したアプリを積極的に受け入れる目的で、2011年に提供が開始されました。当初、iOS用のアプリを移植したものも含めて、1,000本強で始まり、現在では最新のmacOSやマイクロソフト社の「Office 365」なども、このアプリストアからダウンロードが可能になっています。

 

chrome ウェブストア(CWS)

グーグル社が提供するブラウザのGoogle Chrome向けのアプリや拡張機能の配信サービスです。サードパーティが開発したアプリの配信も行っています。2011年に開設されました。

提供されるアプリには、GmailやGoogleカレンダーなど、通常のWebサイトのように機能するものと、Google Chrome の特定の機能を使って、デスクトップ上で動くソフトウェア プログラムのように機能するものがあります。

2019年8月現在で約19万本のアプリ・拡張機能が提供されています(出典:wikipedia)が、不正利用が横行したため、支払いサービスは停止されました。

 

dマーケット

「dマーケット」は、NTTドコモが同社のスマートフォンなどに、有料・無料のアプリと、電子書籍、音楽、動画などのデジタルコンテンツを配信するサービスです。もともと「ドコモマーケット」の名前で、携帯電話のiモード向けのコンテンツの配信を行っていた(2010年開始)ものが、発展的に改称されました。

dアカウントを持っていれば、通信会社はNTTドコモでなくても利用でき、iPhone、android系、windows系のいずれのスマートフォンにも対応しているのが特徴です。

 

Galaxy Store(旧名Samsung Apps、Galaxy Apps)

サムソン社がGalaxyという名称のスマートフォンなどの端末ユーザーのために運営しているアプリストアです。Galaxyユーザー専用のアプリ(ゲームを含む)の配信も行われています。

 

その他、国外には、インテル社の「AppUp Center」、リム社の「Blackberry App World」や、サードパーティが運営してる「GetJar」、「MobiHand」、「Handango」など、様々なアプリストアが存在します。