DXリテラシ向上対策部会 通信 Vol.2

発行:2022年10月14日

修正版発行:2022年10月28日

※本資料は、千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会の活動状況と参考情報を発信するものです。


目次

 1.共同研究会活動報告

 2.アンケート結果報告

 3.DX化事例紹介

 4.セキュリティ事故解説

 5.スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第1回)

 6.今後の予定案内


■共同研究会活動報告

 2022年9月27日火曜15時より、R4年度第1回「行政手続きのオンライン化共同研究会」を25自治体43名の方に参加頂きZoom会議にて開催しました。今回は、行政手続きのオンライン化取組みに関する2種類のアンケート結果をご説明し、オンライン化進捗状況と課題の共有化を図り、今後取り組むべく検討課題を整理しました。第2回以降、この課題への対応方法を各種事例にて研究致します。

 その課題内容を下記5点に整理しました。

 (1) 対面での聞き取りや調査が必要なものに、どう対応するか

 (2) 電子申請に伴う業務変更(業務負荷増)、投資申請、など庁内調整をどのように進めるか

 (3) 行政手続きのオンライン化に伴うシステム対応をどのように進めるか

   ・マイナポータルからのデータ連携

   ・電子申請システムの使い分け(マイナポータル、ちば電子申請サービス、専用クラウド

    サービスなど)

   ・システム運用コスト、運用に掛かる手間の抑制(サポート体制や利活用スキルの向上)

 (4) 利用者が増えない、利用者の環境が整わないことにどう対応するか

 (5) 何をどこまで実現することが住民サービスの向上と言えるのか

 ※詳細は、9/27共同研究会の配布資料および議事録を確認ください。

 

 また、今回は、共同研究会事前アンケートで希望のあった、他自治体との意見交換をZoomのブレークアウトセッション機能を使用し実施しました。ルームごとにコーディネータ役を設定し、自由な意見交換としましたが、1ルームの人数、メンバー構成、検討テーマの事前設定など改善点を多々指摘頂きありがとうございました。実施方法を改善しながら、自治体の皆様同士が直接意見交換できる場を継続していきたいと思います。

 

■アンケート結果報告

 9/27共同研究会でご説明した内容の簡単な総括となります。

デジタル庁が8月初旬に実施した「ぴったりサービス取組状況調査」から、千葉県54市町村の取組状況を確認したところ、総務省が2022年度末を目標に進める31手続きのうち、子育て関係15手続きは約半数の自治体で電子申請化できており、2022年度中には90%近く実施する予定となっています。

 介護に関する11手続きの実施済みは全体ではまだ1割以下と遅れていますが、2022年度末には8割近く実施する予定となっています。被災者支援は罹災証明書発行のみが31手続きの対象ですが、あまり進んでいなく(7自治体のみ)、電子申請を実施しないとするとの回答が7割を超えている状況です。

 実施が遅れている理由は、業務変更による業務負荷増や予算調整など庁内調整に苦労されていること、対面聞き取り要件への対応方法に苦慮されている状況のようです。

 

 当研究会事前アンケートにて把握できたことは、31手続きに拘らずオンライン化に取組んでいる自治体は、オンライン申請のクラウドサービスも利用しているようです。また、オンライン化に伴うシステム対応は遅れていて、申請データのダウンロード、業務システムへのアップロード/手入力など手作業で対応しており、業務負荷増加の1因になっており、オンライン申請が増加していくと、自動連携などのシステム対応が必須になっていきます。押印廃止・キャッシュレス化・添付書類の簡素化など業務手順の見直しと合わせて進めていく必要があります。

 また、現在は、オンライン申請の件数が少なく、今後、マイナンバーカードなど住民側の環境整備と合わせ、ニーズのあるところにどのように周知していくか、住民サービス向上に向けた取り組みが重要と皆さん認識されています。

 今後は、これらアンケート結果を踏まえ、先行自治体の実施事例やIT活用事例などの情報提供を進めます。

 

■DX化事例紹介

 今回は第2回目として、香取市のデジタル地図活用の事例を紹介します。

 香取市と東京情報大学は9年前の平成25年に地域共同連携による「佐原いろはカルタ」を作成し、デジタル地図と連携させました。これは、佐原の魅力をカルタの読み札と絵札の形で紹介しようとする試みで、WebサイトやQRコードで、3D画像や、歴史的な街並みが、楽しめるというものです。

 事例としては、少し古いと思われるかもしれませんが、実証実験から始まって9年間も続いているということに、まず驚かされ、継続することの難しさをどのように乗り越えてきたのか、そこにどのようなノウハウがあるのかを知りたいと思いました。

 また、このように産・学・官連携によるDXへ取り組みは、最先端の技術を地域活性化に結び付けることができる可能性をもっていることを、この事例から学ぶことができるのではないでしょうか。

 

 詳しくは、こちらをご覧下さい

 http://www.tuis.ac.jp/research/joint-project/report/11_51b00a77d64a5_5487934759e9d/

 https://sawara-machinami.com/archives/4787

 

■セキュリティ事故解説

 今回は、セキュリティリスクの2回目としてランサムウェアの事例を取り上げます。

ランサムウェアの被害はIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査によると2022年上期の被害ランキングで1位となっています。

資料提供IPA「情報セキュリティ10大脅威 2022」

昨年

順位

個人 順位 組織 昨年順位
2位 フィッシングによる個人情報等の詐取 1位 ランサムウェアによる被害 1位
3位 ネット上の誹謗・中傷・デマ 2位 標的型攻撃による機密情報の窃取 2位
4位 メールやSMS等を使った脅迫・詐欺の手口による金銭要求 3位 サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃 4位
5位 クレジットカード情報の不正利用 4位 テレワーク等のニューノーマルな働き方を狙った攻撃 3位
1位 スマホ決済の不正利用 5位 内部不正による情報漏えい 6位
8位 偽警告によるインターネット詐欺 6位 脆弱性対策情報の公開に伴う悪用増加 10位
9位 不正アプリによるスマートフォン利用者への被害 7位 修正プログラムの公開前を狙う攻撃(ゼロデイ攻撃) NEW
7位 インターネット上のサービスからの個人情報の窃取 8位 ビジネスメール詐欺による金銭被害 5位
6位 インターネットバンキングの不正利用 9位 予期せぬIT基盤の障害に伴う業務停止 7位
10位 インターネット上のサービスへの不正ログイン 10位 不注意による情報漏えい等の被害 9位

 

 千葉県の事例では、2022年7月に南房総市の学校業務で使うサーバーがランサムウェア攻撃を受けました。

 その結果、児童、生徒の個人情報や教職員の人事情報が閲覧出来なくなる被害を受けました。同市教育委員会は直ちにネットワークを遮断して、小中学校での代替端末の用意をするなどの対策をとったそうです。

 IPAでは「ランサムウェア対策特設ページ」を開設して、ランサムウェア対策とその関連情報を下記のURLで公開しています。

 https://www.ipa.go.jp/security/anshin/ransom_tokusetsu.html

 

 詳しくは、こちらをご覧下さい

 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/13334/

 https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2022.html

 

■スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第1回)

 先日、総務省の「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の議論の参考にするための提案を、「Excel方眼紙」に書き込んで、メールに添付して送るよう求めている、というニュースがありました。

 総務省の「Excel方眼紙で意見募集」にツッコミ殺到 河野太郎氏「次からフォームで対応」(ITmedia NEWS) - Yahoo!ニュース (2022年10月11日 参照)

 

 Excelがないと入力できず、長文を入力するのに向いていないセルに入力しなければならず、さらにメールに添付して送らなければなりません。集めたデータも、おそらく自動的にデータベースで処理できるようにはなっていません。利用者のこともデータの効率的な処理も考えていない、Web3とは程遠い状況にがっかりしてしまいました。このような事態を招かないためにも、知っておいて欲しいガイドラインがあります。

 

 近年、PCを使わず、スマートフォンのみでインターネットにアクセスする人が増えています。多くのWebサイトがスマートフォンに対応し、専用のアプリが用意されたサービスも大幅に増え、ますます使い勝手が良くなっています。しかしながら、世の中には多様な人がいて、インターネットの情報にアクセスするのに不便を感じている人もいます。身近な例として高齢者を考えてみます。歳を取ることで、視覚・聴覚や運動機能が衰えてゆきます。すると、画面の文字が見えにくくなったり、指先での細かい操作が困難になったりします。

 SDGsに繋がる考え方に「ユニバーサルデザイン」があります。障がいの有無にかかわらず、すべての人にとって使いやすいようにすることを目指す、というものです。インターネットの世界においては、W3Cという団体が「WCAG」というガイドラインを公開しています。W3CはWorld Wide Web Consortiumの略で、WWWで用いられる技術の標準化、相互運用性の確保を目的とする団体です。WCAGはWeb Content Accessibility Guidelinesの略で、ウェブコンテンツがさまざまな障がいのある人でも利用できることを目指したガイドラインです。WCAGはWCAG1.0、WCAG2.0、WCAG2.1、WCAG2.2、WCAG3.0と、時代に合わせて内容が更新されています。

 2008年勧告のWCAG2.0では、主にWebページをPC画面で見ることを対象にしていました。また、これは国際規格である「ISO/IEC 40500:2012」として承認され、ウェブアクセシビリティにおいて各国で採用されている国際標準になっています。2018年勧告のWCAG2.1ではモバイルデバイス上における利用が追加され、また弱視・認知・学習障害への対応強化を目的とした内容が追加されました。WCAG2.2(勧告候補)ではさらに項目が追加され、WCAG3.0(草案)では、範囲をさらに広げるとともに、WCAG2.2までと異なる評価方法が提案されています。

 

今回は、WCAG2.0の達成基準を満たさない失敗例の一部を紹介します。

 

失敗例1:フォームの必須項目などが色の違いだけで示されている。

 この例では氏名と電話番号が必須入力の項目ですが、色の違いだけで表現されているため、色覚に障がいのある方やスクリーンリーダーを利用している方には区別がつきません。必須入力の項目に(※)や【必須】を付けるなどの工夫が必要です。

 


失敗例2:単語を視覚的にフォーマットするために、単語の中にスペースや改行を用いる。

 この例では「東京」の幅を広げるためにスペースを入れ、あるいは縦書きにするために改行を入れています。ブラウザ上での見た目には問題ありませんが、スクリーンリーダーや検索エンジンにおいて、「東」と「京」が別の単語として認識されてしまいます。文字の間隔や縦書き横書きの指定にはスタイルシート(CSS)を使う必要があります。

 


失敗例3:音声が自動再生され、ミュート、一時停止もしくは停止する仕組みがない。

 Webページを開いたときに音声が自動再生されると、音声が出ることを想定しておらず驚いたり、不快に感じる人がいるかもしれません。また、音声が再生され続けると、スクリーンリーダーの音声と重なって聞き取りづらくなるかもしれません。音声をミュート、一時停止もしくは停止する仕組みを目立つように示す必要があります。できれば、利用者の要求に応じてのみ音声を再生する仕組みにすべきです。

 

 次回はWCAG2.1で追加された項目の一部を紹介します。

 

■今後の予定案内

 共同研究会は今後下記2回の開催を予定しています。いずれも1時間半のオンライン開催です。

 ・第2回共同研究会、2022年11月21日月曜15時~16時半

   加古川市で昨年実施した行政手続オンライン化検討の事例紹介とディスカッション

 ・第3回共同研究会、2023年2月21日火曜15時~16時半

   千葉県内自治体の取組み事例・DX化事例紹介とディスカッション、研究会の方向性確認

 研究会開催の準備が整いましたら、メールにて連絡いたしますので「ちば電子申請システム」から参加申し込みをお願いします。

 


■(参考)ITリテラシ向上サイト

下記はR3年度までの千葉県地域IT化推進協議会 ITレテラシ向上対策部会の活動として発行したメルマガをまとめたものです。参考にして下さい。なお、現在メルマガ発行は終了しています。

 

ITリテラシを高めよう! 


※本資料は共同研究会参加メンバーおよび協議会メンバーを対象に、千葉県が配信しております。

 

発行:千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会

     部会長:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 浅井 鉄夫

     事務局:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 加野 隆司

         電話 080-3425-8779 電子メール t.kano2005@gmail.com

     監事 :千葉県DX推進協議会 事務局 千葉県総務部 デジタル戦略課 島田 悟

 

次回発行予定 2022年12月