オンラインストレージ

オンラインストレージとは、インターネット上に用意されたストレージ(データサーバ)に、データを保管できるサービスです。クラウドストレージと呼ばれることもあります。

企業や個人は、このサービスを使って、PCなどのローカルディスクのバックアップに用いたり、他の人とファイル共有を行ったりできます。

 

オンラインストレージは、インターネット上のサービスなので、通常はサービス提供者のサイト(あるいはスマホアプリ)を通じてIDとパスワードなどのアカウント登録を行い、ログインして使用します。

 

企業活動においては、データを円滑に利用できることが重要で、オンラインストレージを使えば、それが可能となり、後述のように多くのメリットが生まれるということで、利用企業は年々増加しています。

  

【便利知識】

ファイル転送サービスもオンラインストレージの一種です。

  

情報通信白書(令和2年版)によると、クラウドサービスを利用する企業の割合は64.7%(2019年)で、年々増加しています。(右図参照)

また、利用しているサービスの1位は「ファイル保管・データ共有」(56.0%)で、クラウドサービスを利用している企業の半数以上がオンラインストレージを利用しています。

その半面、「必要がない」「セキュリティに不安」「メリットが分からない」といった理由で、クラウドサービスを利用しない企業も少なくありません。

 

クラウドサービスの利用状況(出典:情報通信白書令和2年版)
クラウドサービスの利用状況(出典:情報通信白書令和2年版)

ここでは、クラウドサービスのなかでも、特に企業がオンラインストレージを利用するメリット、利用に当たって押さえておくべきポイントや留意点について解説します。

 

オンラインストレージの主な用途と基本機能

オンラインストレージの主な用途とそれを実現するための機能は、下表のとおりです。

主な用途 求められる要件 主たる機能
データのバックアップ 

大容量のデータを高速でコピー

定期的に自動でバックアップ可能

オンラインストレージ内のデータが保護されている

大容量のデータサーバ

高速なアップロード機能

自動・手動のバックアップ機能

セキュリティ対策・災害対策

ファイルの共用・共有

どこからでも、いつでもアクセス可能

複数のデバイスからアクセス可能

デバイスの種類を問わない

利用者や共同利用者の利用権限を、ファイルあるいはフォルダ単位で管理できる

データの更新が自動で同期される

データが世代管理され、過去のデータを容易に復元できる

マルチデバイス対応

アクセス制限管理

自動同期

世代管理

データ復元機能

 

ファイル転送

特定ファイルのダウンロード用URLを取得・通知できる

ログインしなくても通知されたファイルをダウンロードできる

ファイル転送機能

オンラインストレージを利用するメリット

いつでも、どこからでもアクセスできる

インターネット環境があれば、時間を選ばず、外出先からでも必要なデータを利用できます。USBメモリやSDカードなどデファイルを持ち出す必要がなくなり、落としたりなくしたりするおそれがありません。

ファイルの一元管理ができる

データを一元管理できるため、必要な情報をすぐに探し出せます。部署や拠点が多い企業では、ファイルを部署や拠点別のファイルサーバで管理しているケースがよく見受けられますが、それらをオンラインストレージに集約すれば、ファイルを重複して作成したり、他の部署に問い合わせたりするような無駄が発生しません。

ファイルの共有や共同編集がしやすい

インターネットを介して同じファイルを利用できるので、メール添付等で送受信する手間がなくなります。各端末から更新できるので、テレビ会議をしながらドキュメントを手分けして作成することなども容易になります。

バックアップが自動でできる

バックアップが自動でできるので、機器の障害や災害によるデータの消失や破損のリスク対策と、バックアップをその都度取る手間の軽減ができ、バックアップの取り忘れも防止できます。

ファイルサーバの管理・運用が軽減できる

自社でファイルサーバを設けてファイル管理を行った場合に比べて、ファイル管理に関わる管理費や運用費を大幅に軽減できます。

低コストで導入でき、容量の拡張性も高い

オンラインストレージの利用は、無料で開始できるものもあり、容量やセキュリティ等を考慮して有料サービスを利用する場合でも、比較的低コストで導入できます。また、容量を使用状況に合わせてすぐに拡張でき、安いコストから始めて必要に応じて増やしていくことができます。

 

オンラインストレージ利用の留意点

オンラインストレージの利用は上述のようなメリットがありますが、一方、以下のような留意点があることに注意が必要です。

 

セキュリティリスクがある

多くのオンラインストレージでは最新のセキュリティ対策が施されていますが、インターネット上にデータを保管すること、複数人でファイルを共有したりすることから、情報漏えいや第三者によるサイバー攻撃などによるセキュリティリスクがあります。

自社では障害時の復旧対応ができない

利用しているオンラインストレージがヒューマンエラーやハードウェア障害など何かしらのトラブルや、サイバー攻撃などでダウンした場合、データが消失したり、データにアクセスできずに業務がその間停止したりするリスクがあります。その際、障害復旧はサービス提供者に任せるしかありません。

提供サービスの停止、機能変更、料金変更、倒産リスクがある

サービスを提供する事業者が急にサービスを停止したり、提供機能の一部を変更したり、料金を値上げしたり、あるいは倒産したりするリスクがあります。事業者の倒産でサービス停止となった場合などでは、データがすべて消失してしまうおそれもないとは言えません。

使いやすくカスタマイズすることが困難

サービスの提供内容は決められていて、基本的にカスタマイズ、つまり利用企業の独自な使い方に合わせるような機能変更などはできません。ただオプション機能が用意されているクラウドストレージもありますので、事前にどのようなオプションがあるのかも充分検討して利用を開始されると良いでしょう。

 

オンラインストレージ導入時の検討ポイント

無料のオンラインストレージは、企業が利用する場合はメリットよりも、セキュリティ面やデータ容量など、いろいろな面でデメリットとなるリスクが高く、得策とは言えません。また、有料であっても提供される機能や性能は提供事業者によって異なるため、自社に合ったクラウドストレージを選択して導入する必要があります。

企業向けのオンラインストレージは、個人向けのものと比べて、主に以下の機能が強化されています。

 

セキュリティ機能

自社のセキュリティポリシーに合致しているオンラインストレージを選ぶことが大前提です。企業向けオンラインストレージに備わっている主なセキュリティ機能には以下があります。

  • ファイルの暗号化
  • ウイルスチェック
  • アクセス制限管理(IPアドレス制限機能、デバイス認証機能、利用制限管理機能など)
  • ログイン認証機能(ワンタイムパスワード、2要素認証など)
  • ログ管理機能
  • 複数アカウント管理機能
  • データサーバの所在場所の指定機能

運用監視

企業にとってクラウドストレージの運用監視体制は非常に重要です。24時間365日の有人監視体制の有無や、監視体制の運用ルールなどを確認しましょう。

 

トラブル時の対応

クラウドストレージのバックアップの頻度や、障害時のデータ復元の処理方法など、障害対策の内容を確認して、データの重要性に合った障害対応をしているオンラインストレージを選ぶことが重要です。自然災害やサイバー攻撃ですべてのデータが消失するリスクに対しても、物理的に離れた複数の場所にもデータのバックアップを保管しておいて、できるだけ直前の状態にまで速やかに復旧できる仕組みが備わっていることが望ましいです。

また、24時間365日の、電話やメールによる問い合わせ対応の体制を提供しているオンラインストレージの利用をおすすめします。

 

操作性・機能性

オンラインストレージは、簡単に設定して使い始められます。基本的に操作は難しくありませんが、クラウドストレージごとに操作の方法が異なり、同じクラウドストレージをパソコンで利用する場合でも、WindowsのExplorerを介したり、ブラウザからログインしたり、などで操作も機能も異なります。スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末では専用アプリをインストールして利用します。

 

ファイルを社内だけでなく取引先企業などと共有する場合、ファイルやフォルダ単位でアクセス制限を設定する機能が必要です。また、ファイルの転送先が不特定多数の場合は、同じサービスのIDを持たない相手にも送信できる機能が必要でしょう。ファイルの共用・共有で、上書きや削除をされたくないファイルに対しては、「ダウンロードのみ可」といった操作の制限を付けられる方が良いでしょう。

 

保管容量・アップロードするときのファイル容

使用可能な容量が不足していればどれほどセキュリティや操作性、機能性に優れていても利用できません。自社の業務で将来必要になる分も含めて容量を予測して、利用プランを選びます。また、容量が予測に対して急に不足することになったときに、速やかに増量できるかの検討もしておくことが必要です。

さらに、ファイルを送受信(アップロード)するときの容量の制限についても、事前に確認をしておきましょう。

 

利用料金

利用料金は、通常1GB等の単位容量当たりの金額で比較しますが、機能と安全性によっても利用料金が異なります。価格優先なら、必要最低限の機能・性能・安全性を備えているサービスから利用料金の低いものを選び、高機能・高性能・高安全性を優先したければ、単位容量の金額の高いサービスから機能や安全性を比較して選べば良いでしょう。

 

主なオンラインストレージ

個人向け

個人向けのオンラインストレージは、Windowsパソコン標準のOneDrive、Gmail等のGoogleサービスに付随していてAndroid系スマートフォンなどに標準のGoogle Drive、iPhoneやiPadなどのアップル社製品に標準のiCloud Drive、オンラインストレージの草分け的尊大のDropbox、セキュリティ等企業向けのサービス・機能が充実して利用拡大が広まっているbox、の5つが代表的なものです。

 

サービス名称 運営会社 プラン・料金

最大

容量

特長
Dropbox  Dropbox

Basic      無料

Professional    2,000円/月

2GB

3TB

オンラインストレージの草分け的存在

エクスプローラーでファイル操作可能

OneDrive マイクロソフト

Basic      無料

Standalone      224円/月

365 Personal    12,984円/年

 5GB

100GB

1TB

Windows PCの標準機能

エクスプローラーでファイル操作可能

Office機能が付属

Google Drive

Google One

グーグル

Google Drive   無料

Google One 100GB 2,500円/年

      2TB 13,000円/年

15GB

100GB

2TB

Gmailなど各種のGoogle提供サービス利用者に付与されるオンラインストレージ

有料プランはGoogle Oneのサービス名称になった

iCloud Drive アップル

iCloud Drive    無料

     50GB   130/月

     2TB  1,300円/月

 

5GB

50GB

2TB

 

iPone、iPad、Mac端末などアップル社製品に標準提供されているオンラインストレージ

Windows PCのアプリも用意されている

box box

individual     無料

Personal Pro   1,200円/月

10GB

100GB

無料プランの容量が大きく、セキュリティ面でも定評のあるオンラインストレージ

法人利用者を主体に伸びが大きい

他には、Amazon会員に付与されるAmazon Cloud Driveや、GalaxyクラウドASUS Web Storageなど、スマートフォンやタブレットの開発メーカーが提供しているものもあります。

 

法人向け

法人向けオンラインストレージは、利便性に加えて「保存可能容量」を増やすことができたり、「セキュリティ対策」を強化できたりと、ビジネス向きの仕様となっています。

複数のユーザーが利用するビジネス活動では、容量が大きくセキュリティが管理されている「法人向け」のオンラインストレージを使うべきでしょう。もちろん、基本、有料サービスを利用することになります。

サービス名称 運営会社 プラン・料金

最大

容量

特長
Dropbox Business Dropbox

Standard     1,250円/月・名

Advanced       2,000円/月・名

5TB

適宜

世界40万社以上で導入されているオンラインストレージサービス

OneDrive for Business マイクロソフト

Plan1       594円/月・名

Plan2       1,199円/月・名

365 Business Basic 594円/月・名

365 Business Pro  1,496円/月・名

 5GB

100GB

1TB

Office 365 と統合されていて、クラウド添付ファイルとして Outlook から直接送信したり、ExcelやPowerPointなどとの連携を円滑に行える。

Google Drive

(Google Workspace

:旧G Suite)

グーグル

Business Starter    680円/月・名Business Standard 1,360円/月・名

Business Plus    2,040円/月・名

30GB

2TB

5TB

Google Workspace(旧G Suite)とは、Google が提供するビジネス向けクラウドツールの総称

box Business box

Starter       522.5円/月・名

Business      1,710円/月・名

Business Plus   2,850円/月・名

100GB

無制限

無制限

世界の大手企業6万社以上が導入している米国発のオンラインストレージ。高度なセキュリティ対策と1,500以上ものアプリケーションと統合できる利便性の高さが評価され、日本でも利用者が増えている。

セキュアSAMBA Chatworkストレージテクノロジーズ 

ライトプラン     16,500円/月

ビジネスプラン    38,500円/月

ビジネスプラン 1TB 63,800円/月

 100GB

500GB

1TB

AWSをサーバとする、中小企業向きのオンラインストレージで、24時間365日障害対策と運用監視の体制が整えられている。
DirectCloud-BOX ダイレクトクラウド

Standard       30,000円/月

 

Business       90,000円/月

500GB

 

3TB

2015年にリリースされた導入実績1,000社以上の国産の法人向けオンラインストレージ。最も安いプランでもユーザー数無制限で利用でき、大人数で使うほどコストパフォーマンスの良さを実感できるプランが特長。

NotePM プロジェクト・モード

Starter     3名     1,000円/月

Basic       8名     3,600円/月

Standard  15名       5,700円/月

PRO     50名    17,500円/月

 など

5GB

10GB

15GB

50GB

 

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上記のほかにも、通信会社系のBizストレージファイルシェア(NTTコミュニケーション)、KDDIファイルストレージ(KDDI)、PrimeDrive(ソフトバンク)や、独立系のどこでもキャビネット(大塚商会)、FleekdriveFleekdrive)fileforce(ファイルフォース)、filestorage(ロジックファクトリー)、Smooth Fileクラウド(プロット)などが、法人向けのオンラインストレージを提供しています。