DXリテラシ向上対策部会 通信 Vol.8

※本資料は、千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会の活動状況と参考情報を発信するものです。


目次

 1.共同研究会活動報告

 2.サービス設計12 箇条(第2回:第4条~6条)

 3.セキュリティ事故解説

 4.生成AI について(第2回)

 5.今後の予定案内


■共同研究会活動報告

 2023年11月22日水曜16時より、R5年度第2回「行政手続きオンライン化共同研究」を13自治体28名の方に参加頂きZoom会議にて開催しました。今回は、元自治体職員で、現在、監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部にて自治体の業務支援に従事されている小菅秀太様にご協力を頂き、「マイナンバーカード徹底活用」と題してご講演頂き、皆さんで意見交換しました。

 マイナンバーカードの申請率が78.6%(11/14時点)となり、住民サービス向上に取り組む事例が多くの自治体から上がってきています。今回は、マイナンバーカードの基本情報やセキュリティ上の留意点を押さえつつ、利活用事例を豊富にご紹介頂き、それぞれの自治体の事情に合わせた利活用の考え方について整理することが出来ました。

 マイナンバーカードは住民サービス向上の手段であり、地域や住民のニーズに即したサービスであること。マイナンバーカードを持ち歩いて貰うためには、皆さんがいつもお財布に入れているカードに関するサービスが取り組みやすい。ただ、一度開始したサービスは廃止しづらいので充分なニーズ調査が必要である。というのが、印象的でした。

 参加頂いた自治体の皆様からは、前回取り上げた「書かないワンストップ窓口」の取組みと合わせて検討していくのが良いとのご意見も頂きました。今後の取組みの参考にして頂ければ幸いです。

 

 また、自治体の皆様が業務改革やDX化を進めていく際に、どのように外部の力を活用していけるか、現在、京都府木津川市 デジタル戦略室長(CIO補佐官)であられる阿部一成様より、「CIO補佐官の役割」についてお話し頂きました。地方公共団体における外部人材の起用状況に加え、CIO補佐官の具体的な業務について知ることが出来ました。自治体側(受け入れ側)と応募者側(参画する側)のそれぞれの視点で、期待と不安、留意点について整理頂き、非常に興味深かったです。


■サービス設計12箇条(第2回:第4条~6条)

 「デジタル・ガバメント実行計画」にて紹介されている、「サービス設計12箇条」を前号より説明しています。今回は、第4条から6条までをご説明します。

 ※参考:サービス設計12箇条とは、プロジェクトを成功させ、利用者中心の行政サービスを提供するために必要となるノウハウをまとめたものであり、各項目の相関関係を図式化したものを以下に記載します。

<デジタル・ガバメント実行計画より引用>

第4条 全ての関係者に気を配る 

 サービスは様々な関係者によって成り立っている。利用者だけでなく、全ての関係者について、どのような影響が発生するかを分析し、WinWin を目指す。また、デジタル機器が使えない人も、ITを活用することによって便益を享受できるような仕組みを考える。

 

第5条 サービスはシンプルにする 

 利用者が容易に理解でき、かつ、容易に利用できるようにシンプルに設計する。初めて利用する人やITに詳しくない人でも、複雑なマニュアルに頼らずとも、自力でサービスを利用して完結できる状態を目指す。また、行政が提供する情報や、利用者に提出や入力を求める情報は、真に必要なものに限定する。

 

第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める 

 サービスには一貫してデジタル技術を用い、利用者が受ける便益を向上させる。技術の進展に対応するため、IoTやAI等の新技術の導入についても積極的に検討する。これまでデジタル以外の手段で提供してきたものであっても、業務の見直しによるデジタルへの移行の可能性を検討し、サービスの改善を図る。また、情報セキュリティとプライバシーの確保はサービスの価値を向上させるための手段であることを認識した上で、デジタル技術の活用によってサービスをセキュアに構築する。

 

 第4条に記載のある「全ての関係者」の「全て」には、サービスを提供する側である職員も含まれます。地域課題の解決、住民満足度の向上は必要ですが、WinWinの関係を目指すには、そのサービスを提供する職員にとっても提供しやすいサービスである必要があります。11月22日の共同研究会で小菅様からも「先行自治体の分析手法の一つとして現地視察に行くと良い。視察では、バックオフィスに過大な負荷がかかっていないか見極めると良い」という話がありました。

 新たなサービスの検討時には、ストーリーボードを用いる方法があります。ストーリーボードとは、利用者の理想的な体験を絵コンテで表現したものです。ストーリーボードを用いて、整理した理想的な利用者体験を目に見える形のストーリーで表現することにより、第三者的な検討・評価がしやすくなるとともに、サービス利用に当たってのコンテクスト、周囲の状況・環境等をイメージしやすくなり、サービスの改善策の発想も得やすくなります。この手法を用いて、職員も含めたすべての関係者の体験を可視化し、サービスがシンプルであるか、検討を行います。ストーリーボードに関する詳細は、サービスデザイン実践ガイドブックをご参照ください。

 第6条については、デジタル庁から「構造改革のためのデジタル原則の全体像」という資料が示されていますので、ご参照ください。

 

※関連情報

 サービスデザイン実践ガイドブック(β版)(H30年3月、内閣官房IT総合戦略室)

 構造改革のためのデジタル原則の全体像(デジタル庁)


■セキュリティ事故解説

 コンピュータの障害やウイルス侵入検出を装って、ユーザの動揺を誘い、遠隔操作ソフトをインストールさせ、情報を盗み出したり、金銭を要求したりするサポート詐欺が増えています。

以下は、ニュース記事の引用です。

 

 長野県教育委員会は、県立高校の教諭がサポート詐欺の偽警告画面にだまされ、パソコンを遠隔から操作されたことを明らかにした。端末内部には個人情報が保存されており、外部に流出した可能性もある。同県教委によれば、9月10日に同教諭が業務用端末でインターネットを検索していた際、トロイの木馬に感染したとする偽の警告画面が表示され、被害にあったもの。画面の指示に従って連絡先に電話をかけ、指示に従ったところパソコンを遠隔操作された。

 端末内部には、2004年度から2023年度の生徒の名簿、成績、進路指導、生徒指導、部活動に関する資料や、職員の氏名、住所、電話番号などが保存されていた。操作ログにおいて情報が流出した痕跡は見つからなかったが、情報を窃取された可能性もあるという。

 IPA情報セキュリティ安心相談窓口における、パソコンのブラウザ画面に表示される「偽セキュリティ警告(別名:サポート詐欺)」の手口に関する相談件数が継続して増加しています。月間相談件数が、2023年5月は過去最高の446件となりました。また、最近では、組織や企業においてもサポート詐欺の被害にあったという報道を目にするケースがあります。本庁舎内ではない場所でPCを使用している場合など、上司やシステム管理者がすぐそばにいないため自分で解決しようとして被害が発生していることが要因の一つと考えられます。

 対策としては、偽セキュリティ警告に限らず、パソコンに異常があった場合の対応ルールを定めて「全ての勤務場所・すべての職員」に徹底してください。また、パソコン等情報機器の中にデータを保存せずファイルサーバ等に保存していれば、万が一被害にあってパソコンを遠隔操作されたとしても被害を最小限にとどめることができます。

 

引用元:Security Next

     「第三者が県立高PCを不正操作、偽警告にだまされ - 長野県」

引用元:IPAセキュリティセンター

     「会社や組織のパソコンにセキュリティ警告が出たら、管理者に連絡!」


■生成AIについて(第2回)

―自然言語処理・画像処理―

 ChatGPTの最後の「T」は、「Transformerアーキテクチャ」の頭文字です。文章を一言ずつ順番に見るのではなく、全ての言葉を同時に見て、それぞれの言葉が他の言葉とどう関わっているかを理解しようとする方法です。アテンションメカニズムというものを採用しており、これにより、文章の意味をより速く理解し、特に、翻訳や文章生成などのタスクで優れた性能を発揮します。

 ChatGPTなどの生成AIを使いこなすには「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれるテクニックが必要となります。「プロンプト」は、AIモデルに対する指示や質問のことを指します。「プロンプトエンジニアリング」は、より適切で効果的な応答を得るためにプロンプトを工夫し設計するプロセスです。これには、プロンプトの表現方法の調整、具体的かつ明確な指示の追加、または問いの枠組みを調整することなどが含まれます。プロンプトエンジニアリングは、AIの出力をより制御し、必要な情報や形式で回答を得るための重要なスキルです。

 以下に、ChatGPTを使いこなすためのプロンプトの書き方を述べます。

  1. 明確さ:質問や指示は可能な限り明確にすることが重要です。
  2. 詳細な情報:期待する回答の形式や内容に関する具体的な情報を提供することで、より的確な回答を得られることが多いです。例えば、誰を対象にした回答なのか、何文字程度なのか、回答者の立場や役割は何かという情報を与えます。
  3. ステップバイステップ:複雑なタスクの場合、一度に全ての情報を求めるのではなく、チャット形式で段階的に質問していくと良い結果が得られることがあります。

 次に、画像生成AIについて簡単に説明します。画像生成AIは、プロンプトの内容にマッチした画像をAIが自動で生成してくれます。画像生成AIもディープラーニング(深層学習)を用いています。入力された膨大な学習データを自ら学習、分析し、そこからオリジナルのコンテンツを生成します。画像生成AIの技術が進化するにつれて、著作権に関する問題も複雑化しています。

  1. AIによって生成された画像の著作権:AIによって生成された画像の著作権は、法的には未だ明確ではありません。
  2. トレーニングデータの著作権:AIをトレーニングする際に使用されるデータが著作権で保護されている場合、そのデータを使用すること自体が著作権侵害となる可能性があります。
  3. 出力画像の類似性:AIが生成した画像が既存の著作物と類似している場合、それは著作権侵害と見なされる可能性があります。

 これらの問題には、法的なガイダンスや専門家の助言を求めることが重要です。


■今後の予定案内

 共同研究会は今年度3回めとして下記を開催予定です。次回も1時間半のオンライン(Zoom)開催で、場所と参加人数は問いません。講演構成の関係上、ブレークアウトセッションによる意見交換の時間が取れませんが、質疑応答を有効に活用したいと思います。

 千葉県DX推進協議会の会員有無も問いませんので、お気楽に参加ください。

 第3回共同研究会 

 2024年2月20日火曜

 16時~17時半

 将来像としての電脳市役所(メタバースの活用)

・メタバースの基本的な仕組み(仮)

・メタバース トライアル事例紹介(仮)

・メタバース研究成果(仮)

研究会開催の準備が整いましたら、メールにて連絡いたしますので「ちば電子申請システム」から参加申し込みをお願いします。


■(参考)ITリテラシ向上サイト

下記はR3年度までの千葉県地域IT化推進協議会 ITレテラシ向上対策部会の活動として発行したメルマガをまとめたものです。参考にして下さい。なお、現在メルマガ発行は終了しています。

 

ITリテラシを高めよう! 


※本資料は共同研究会参加メンバーおよび協議会メンバーを対象に、千葉県が配信しております。

 

発行:千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会

     部会長:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 浅井 鉄夫

     事務局:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 加野 隆司

         電話 080-3425-8779 電子メール t.kano2005@gmail.com

     監事 :千葉県DX推進協議会 事務局 千葉県総務部 デジタル戦略課 島田 悟

 

次回発行予定 2024年2月下旬