ブロードバンド

ブロードバンド(Broadband)とは、直訳すると「広帯域」のことですが、一般的には、ADSLやケーブルテレビ(CATV)、光回線などの高速インターネット基盤を利用した、高速・大容量の情報通信サービスのことを言います。ブロードバンドに対して、従来の電話回線やISDN回線、携帯電話回線などをナローバンド(Narrow band)と呼ぶこともあります。

 

インターネットによる各種のサービスが普及し始めると、パソコンでの情報サービス利用がアナログの電話回線あるいはISDN経由というものでは、回線速度の点で不満になりました。ダイアルアップの手間やアナログ回線ではダイアルアップをしている間は音声通話ができないのも欠点でした。(ISDNは電話番号が2つ備わっているので、同時利用ができますが。)

 

21世紀に入る前後、政府による「e-Japan計画」の策定も後押しとなって、月額数千円程度で常時接続が可能になるサービスの提供が展開・普及し始めました。平成13年(2001年)版情報通信白書では、ブロードバンド元年と位置づけられました。e-Japan計画の背景は、90年代、日本が長くデフレ不況に苦しんでいる間に、米国では、好景気の中で「ヤフー」や「アマゾンドットコム」など、インターネットを活用した先駆的なサービスを提供する新興企業が次々と出現して、著しく伸びていたからです。

 

ケーブルテレビ事業者による定額制の高速インターネット接続サービスの提供が始まり、次いで、通信事業によるアナログ電話回線のブロードバンド化が始りました。

動画配信サービスやオンラインゲームなどが普及し始めると、ADSNでも速度が不満になってきました。そこで、メタル(銅)製の線から、光ファイバー製の線(光回線)への切り替えの推進が始まりました。

また、iPhoneなどのスマートフォンの普及拡大により、携帯電話網も高速化が求められるようになりました。

 

では、ASDN、CATV、光回線、高速モバイル通信がどのようなものか、詳しく見ていきましょう。

 

ADSL

ADSN(非対称デジタル加入者線:Asymmetric Digital Subscriber Lineの略)は既存のアナログ電話回線を使って高速データ通信を実現する技術のひとつです。

 

音声通話では用いない周波数帯域を使ってデジタルデータの通信を行うという技術をxDSL(あるいはDSL)と総称します。xDSLは、ADSL、SDSL、HDSLなどの技術をまとめて表現したもので、ADSLがもっともよく利用されているものです。

 


ADSLは、データ通信の上りよりも下りの方に広い帯域を割り当てることで上下の回線速度が異なる(上りよりも下りの方が速い)方式のことを言います。

個人利用は、リクエストを送って、情報やデータを受け取る用途が大半ですので、上りよりも下りの方が圧倒的にデータ量が大きくなります。ADSLはそのニーズに合わせた技術なのです。

 

ADSLはブロードバンドの各技術の中では回線速度が最も低く、光回線の導入費用や利用料金も安くなったことから、ADSLから光回線に切り替える人が増えています。ADSLの利用者は激減しており、間もなく終焉を迎えようとしています。(下図参照)

出典:平成30年版情報通信白書
出典:平成30年版情報通信白書

CATV

ケーブルテレビ(CATV)会社もインターネットサービスに参入しました。各家庭への販売促進の一環として高速なインターネット利用ができることを売りにしたのです。

 

幹線は(電柱まで)光ファイバー、家庭への引き込みは同軸ケーブル(アンテナ線)というハイブリッドな形で、光回線とほぼ同等の速さのサービスを提供しています。ただ、局側のインターネット回線やトラフィックにも左右されますし、帯域制限がかけられていることも少なくありません。

 

光回線

「光回線」とは光ファイバーケーブルを使用してレーザー光で通信する回線のことです。光回線を使ったインターネット接続サービスを「光回線サービス」といいます。レーザーなどの光で通信することを「光通信」といいます。

 

ガラスや樹脂でできている「光ファイバー」の中を、光の信号が反射しながらデータを送る事で、長距離かつ大量のデータ送信を行っても非常に速い速度で転送する事が可能になりました。現在では、数千キロメートルに渡って光ケーブルが深海に敷かれています。

 

電話ケーブルはメタル(銅線)でできており、電気によって信号が流れ(電気通信)ます。電気通信がノイズなどの外的要因に比較的弱いのに対して、光通信は、ノイズの影響を受けにくく、長距離回線でのロスも極めて少なく安定しています。

 

回線速度の点でいえば、ADSLの下り容量が最大50Mbps、CATVの下り容量が最大300Mbpsほどなのに対して、光回線の下り容量は最大1Gbps~2Gbpsと、けた違いに容量が大きい(つまり速度が速い)のです。

 

FTTH

上述の図表でもお分かりのように、総務省の情報通信白書などにおいては、光回線サービスのことを「FTTH」(Fiber To The Home)と記述しています。

光ファイバーを使った「家庭向けの」通信サービスのことで、通信業者の基幹ネットワークなどで使用される光回線とは別物、ということを明確にしたかったのかもしれません。

 

高速モバイル通信

携帯電話網(移動体ネットワークとも言います)も、スマートフォンの普及により、急速に高速化が求められるようになりました。通信機能だけに特化したモバイルルータを利用して、パソコンやタブレットを外出先で利用することもできるようになりました。携帯電話各社は競ってモバイル通信の高速化を推進しています。

 

また、MVNO(仮想移動体通信事業者。自らは無線通信回線設備を開設・運用せずに、自社ブランドで携帯電話やPHSなどの移動体通信サービスを行う。)各社からは、最大利用容量などに制限がありますが、月額1,000円前後という格安で、最大225Mbpsという高速のデータ通信を利用できるようなサービスも提供されており、利用が拡大しつつあります。

 

第5世代移動体通信(5G)

携帯電話網(移動体通信ネットワーク)は、下表のような変遷を経て、進化してきました。GとはGeneration(世代)のことです。

2019年現在では、4Gが主流ですが、ガラケーと称される携帯電話器もまだ使用されていることから、3Gも併用されています。

 

4Gまでは、携帯電話・スマートフォンのための通信技術でした。あらゆるモノがネットで繋がる世界(IoT)の実現のためには、通信によるタイムラグがほとんど無い、という超高速性が求められています。

これを5Gと呼んで、その実現に向け、各国で取り組みがされています。

 

5Gについては「5G」のページで詳しく解説していますので、そちらを参照ください。

 

WiMAX

上述のように無線電話のための通信技術の進化のほかに、最初から、高速な無線データ通信を目指して開発された通信技術のひとつに、BWA(無線ブロードバンドアクセス。Broadband Wireless Accessの略)があります。BWA は、室内での無線LANとは異なり、無線基地局からの電波によりデータ通信を行います。

 

WiMAX(ワイマックス。Worldwide Interoperability for Microwave Accessの略)は、BWAの代表的な規格です。もともとは、人口希薄地帯や、光回線などの通信回線の敷設が困難な地域のために、中長距離の範囲をカバーすることを目的に開発された通信規格で、使用周波数帯域は2~11GHz(ギガヘルツ)、最大伝送速度は約75Mbps、基地局より最大50キロメートル以内での無線通信が可能というものです。

 

この技術をモバイル端末向けに応用したモバイルWiMAXという通信規格も制定されて、使用周波数帯域は6GHz以下で、理論値としての伝送距離が半径約1~3キロメートル、伝送速度が最大毎秒75Mbpsです。

 

日本ではUQコミュニケーションズにより、UQ WiMAXの名前でサービスが展開されています。使用周波数帯域は50MHzまでで、WiMAX2+というサービスでは、伝送速度下り最大225Mbpsの高速通信サービスを提供しています。

 

上述の情報通信白書のグラフでBWAと書かれているものはWiMAXのことと思って差し支えありません。

ちなみに、同じグラフでFWA(固定無線アクセス。Fixed Wireless Accessの略)と書かれているものは、屋外の固定された機器間での広帯域通信を規定したFWAを用いて、通信事業者の基地局と加入者宅を結ぶデータ通信サービスのことを指します。FWAの加入者数は少なく、また、他のブロードバンドの普及してきたことから、年々減少しています。

 

移動体通信の世代別特徴

世代 導入時期 特徴
第1世代(1G)  1980年代 

音声主体のアナログ無線通信。つまり初期の携帯電話に対応したもの。

日本、米国、欧州でそれぞれ別の規格が存在した。

第2世代(2G) 1990年代

デジタル無線技術を用いて、音声に加えてパケット方式のデータ通信に対応したもの。

メールをはじめとする携帯データ通信の利用が本格化した。国内では、1999年にNTTドコモがiモードを開始し、各種の情報提供やインターネットメールを携帯電話で使えるようになり、携帯データ通信の利用が一気に広がった。

第3世代(3G) 2000年代

2000年にITU(国際電気通信連合)による世界標準が制定され、データ通信が高速化されとともに、同じ携帯電話端末を世界で使用できるようになった。当初2Mbpsであった最大データ速度は、10~20Mbpsにまで進化していった。

さらに第4世代につながる新たな高速化技術としてLTE(Long Term Evolution)が開発された。LTEは3.9Gとも称された。

2007年のiPhone発表をきっかけに、世界中でスマートフォンの普及が始まった。写真を手軽に送れることなどから、SNSなどの文化が広まる。

第4世代(4G) 2010年代

2012年にITUにより世界標準が改訂され、その目指すべき目標として50Mbps~1Gbps程度の超高速通信と、固定通信網と移動通信網のシームレス利用などが掲げられた。

データ通信がさらに高速化し、ハイスペックなスマートフォンが続々と誕生した。若者を中心に、動画配信サービスや音楽のストリーミング、オンラインゲームなどのサービスが利用されるようになった。

第5世代(5G) 2020年代

第4世代までは、携帯電話・スマートフォンの利用のための技術であったのに対して、第5世代はそれを超えた「あらゆるモノがネットで繋がる(IoT)」ことを実現するための技術とされる。2020年の実現を目指し、世界各国で取り組みが進められている。

通信の遅延がほとんど起こらないことから、遠隔医療や自動運転技術のさらなる発展なども予想される。

ブロードバンド比較表(容量無制限の場合)

光回線 ADSL CATV 4G(LTE) BWA(WiMAX)
速度  100Mbps〜2Gbps 〜50Mbps 〜160Mbps ~1Gbps ~225Mbps
料金 4,000〜6,000円/月 1,200〜4,000円/月 3,000〜6,000円/月 3,000~4,000円/月 3,500~4,400円/月