DXリテラシ向上対策部会 通信 Vol.3

発行:2022年12月14日

※本資料は、千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会の活動状況と参考情報を発信するものです。


目次

 1.共同研究会活動報告

 2.DX化事例紹介

 3.セキュリティ事故解説

 4.スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第2回)

 5.今後の予定案内


■共同研究会活動報告

 2022年11月21日火曜15時より、R4年度第2回「行政手続きのオンライン化共同研究会」を20自治体43名の方に参加頂きZoom会議にて開催しました。今回は、外部講師をお招きし、加古川市様で「手続オンライン化研究会」を実施された時の検討の進め方や検討ポイントについてお話し頂き、研究会参加の皆さんで課題対応策を“考えて”みました。

 

「待ったなし!オンライン化をしてみる行政手続の選び方」では、対象手続きの抽出パターンとそのKPI(Key Performance Indivator:重要業績評価指標)を事例を交え紹介頂きました。

 ・選定パターン1:押印・対面・書面など障壁のない手続きから始め、その種類を増やす

 ・選定パターン2:ぴったりサービスを最大限に活用し、オンライン化率を高める

 ・選定パターン3:手続き件数が多いものを周辺手続き群と合わせて80%達成を目指す

なお、手続きデジタル化に際し、規制改革にあたるものは条例改定等が必要となるとのことです。

 

そして、「オンライン化をする行政手続きの選び方、その心得について」下記指南を頂きました。

 ① 今現状の課題と、今後起こるリスクを切り分けてから、対策を考えること

 ② 難度や喫緊度等、レイヤーを分けて進め方を考えること(ToBeとCanBeは異なる)

 ③ できない理由を繰り返し考え、できない理由を分類すること

 ④ オンライン化でどこまで到達したいか、どこを変えるのかの領域を方針として

   考えながら整理すること

 ⑤ 住民だけでなく、職員もユーザーであるという視点を持つこと

 ⑥ 職員の業務や働き方の何が変わるのか、プラスになる評価軸(KPI)を明確にすること

 

最後に、“手続きのオンライン化に正解はない”が、国の動きも出てきているので、各自治体のやり方とかツール情報を共有し、勉強会を活用し、是非千葉県全体のDXを進めて行って欲しい。とエールを頂きました。

 

 ※詳細は、11/21共同研究会の配布資料および議事録を確認ください。

 

■DX化事例紹介

 今回の事例紹介は、DX化の阻害要因について考察してみたいと思います。

 「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」

上記タイトルは2021年9月 デジタル庁発足時のスローガンです。これこそが、「行政手続きのオンライン化」のゴールなのですが、第1回共同研究会のアンケート結果で気になる質問事項がありました。 


 設問3「行政手続きのオンライン化に際して発生した課題とその対応について」 

  1 取り組み方針がなかなか決まらなかった <意思決定>        11 

  2 対応するための資金(予算編成、助成金申請)確保に苦労した <資金>      4 

  3 マイナポータルとの連携に伴う業務手順の変更が大変だった <業務変更>     8 

  4 マイナポータルとの接続や既存システムの改修が大変だった <システム>     2 

  5 プロジェクト体制を作るのに苦労した <体制>              7 

  6 オンライン化した手続きの利用促進のための広報が十分でない <広報>    17 

  7 マイナンバーカード等、住民側の環境が整っていない <住民環境>      18 

  8 地域としてオンライン化のニーズが低い <地域特性>        23 

  9 特に課題なし                     1 

  10 その他                    12 


 上記回答を見ますと、7番「住民環境」8番「地域特性」は外的要因(住民側)で、その他はすべて内的要因(行政側)の課題となっております。 

さらに7番の「マイナンバーカード等、住民側の環境が整っていない」<住民環境>と8番の「地域としてオンライン化のニーズが低い」<地域特性>を合わせると全体の約40%になり、大きな阻害要因であることがわかります。これについて内容をもっと掘り下げてみたいと思います。 

なぜならば、行政側の課題であれば、おそらくみなさんの力で確実に実現できると思うのです、そこは民間企業と違う組織力の強みです。

 

 しかし「住民環境」と「地域特性」は市民のDXに対するリテラシとか心構えが課題となります。

つまりサービスを提供する行政側とサービスを受ける住民の関係、つまりお店とお客の関係となります。 

ここで、地元の大衆食堂がコロナ禍のなかで、キャッシュレス化とスマホ注文でデリバリする外部環境の変化に対応するため、新サービスを盛り込んだレストランとして新装オープンすることになったケースを考察してみましょう。 

今まで地元料理店として地域に愛されてきたお店が新装開店しましたが、閑古鳥が鳴いています。 

お店がどんなに美味しそうなメニューを揃えても、お客が注文してくれない、そんな状況です。

その時、お店の選択肢は2つです。1つは従来の大衆食堂に戻す方法、もう一つはキャッシュレスとスマホ注文の使い方を教えて気軽においしい料理を食べてもらう努力をする。 

料理店なのに専門外のデジタルをどうやって教えるのか、ましてやスマホの講習をする暇も場所もない、という声が聞こえてきそうです。

 

 今回のアンケート結果である「行政手続きのオンライン化」も、不謹慎化と思いますが、これに近いのではないかと思います。

そこには、なぜキャッシュレスやスマホ注文にしなければいけないのか、という理由を自分にもお客さんにも丁寧に説明する必要があります。キャッシュレスを「デジタル化」という言葉に置き換えると、地域住民を「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」になります。 

 

 これまで自治体DXの事例を検索してきましたが、内部環境(自治体)のDX化の事例はたくさん出てきますが、外部環境(住民)のDX化は少ないです。

そこで考察の結論は、行政手続きのオンライン化は「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の実現に向けた取り組みだと考えます。

 いかがでしたでしょうか、DX化の取り組みになにかヒントになれば幸いです。

 

■セキュリティ事故解説

 今回の解説は、Web会議におけるセキュリティ対策についてお話します。

野村総合研究所の調査によると、2021年に実施したアンケート調査(※1)の結果、オンライン会議ソフトを利用したことがあると回答した就業者の比率は、日本では48%、日本で利用率が高いソフトは、「Zoom」78.4%、「Microsoft Teams」43.9%の2つで、その他のソフトの利用率を圧倒していたと報告しています。

 ※1「2021オンライン会議ソフト日中比較研究」(NRI、2021/12/27)

 

 この研究会でも使用しているZoomは、多人数での同時接続が安定していて使いやすく、画質・音質とも悪くありません。一方、セキュリティ面では以下のような不安がありました。

 ① 暗号化システムに脆弱性が発見された     ver5.4で対応済み

 ② 勝手にユーザー情報がFacebookに送信される ver4.6.9で対応済み

 ③ Windowsユーザーの情報が抜かれる   ver4.6.9で対応済み

 ④ 通信情報が中国を経由する     ver4.6.9で対応済み

 ⑤ 第三者がZoomミーティングに入り込んでくる

上述のように、①~④の問題については、Zoomにより既に対応済みですが、⑤の「第三者がZoomミーティングに入り込んでくる」問題は、過去に開催された会議と同じミーティングIDやパスワードを使い回したり、操作に不慣れなユーザーが自らミーティングURLを第三者にまで公開してしまったりしたことで発生したトラブルです。

 

 では、Zoomを安全に使うためにどのような点に注意したら良いのでしょうか。

 

1.使用する際のネットワーク環境に注意する

 Zoomに限らないことですが、街中やホテルなどにあるフリーWi-Fiなど、広く開放されたWi-Fiスポットはセキュリティが甘く、接続することで第三者から情報を抜き取られたり、データを改ざんされたりするリスクがあります。もし、街中やホテルなどでZoomを使うときは、自分のスマホをテザリングして使うことで、VPNで接続するのと同様な効果を得ることができます。

 

2.URL・ID・パスワードの設定をする

 Zoomでミーティングを開く際には、ホストが会議室の設定を行い、参加者にはミーティングIDあるいは招待URLを送付します。このミーティングIDや招待URLが外部に漏れてしまった場合、第三者が会議に入ってしまう可能性があります。パスワードを設定しセキュリティを強化すること、そのパスワードも同じものを使い回さず、定期的に変更することもお勧めします。

また、うっかり不特定多数が閲覧できるSNSに貼り付けてしまわないよう気を付けましょう。

 

3.「待機室」を活用する

 Zoomにはミーティング開始前にゲストが集まる「待機室」というスペースがあります。この待機室を有効にしておくことで、事前に誰かが会議室に侵入してしまうトラブルを防ぐことができます。待機室のユーザーをホストが承認することで、会議室に入室できる手順になっており、招待したユーザーなのか、ひとりひとりチェックしてからミーティングを始めることが可能になります。

 

4.招待したユーザーのみが参加できるようにする

 ミーティングを主催するホストは参加に制限をかけることができます。Zoomに登録したユーザー、あるいはドメイン認証されたユーザーのみが会議参加できる設定にすることで、第三者が侵入することを防ぐことができます。重要会議にはこの設定をすることをお勧めします。

 

5.参加メンバーが揃ったらロックをかける

 ゲストが全員揃って、会議をはじめたら、それ以降の参加者をブロックすることができます。ロックかけた状態であれば、IDやパスワードが漏れてしまっても、会議には後から参加することはできません。

運用上、そうもいかないケースがありますので、努力目標ということでよいかと思います。

 

6.必要でないものはホスト以外の権限をオフにする

 会議を主催するホストには参加者の操作を制限する権限があります。たとえば、Zoomでは画面を共有したり、ファイルを参加者に送信したりすることができますが、これらの操作を制限することが可能です。参加者の発言が会議を荒らすと判断したら、ホストはその参加者の音声をミュートにしたり、チャットを無効にしたりして、トラブルを未然に防ぐことができるのです。

 

7.Zoomを最新版にアップデートしておく

 Zoomではセキュリティの脆弱性や機能の不備があれば、随時、修正対応を行っています。そのため、常に最新版のソフトやアプリにアップデートしておくことも大切です。アップデートには時間がかかるケースもあるため、会議を主催、あるいは参加する前に最新版を使っているか、

ときどき確認する癖をつけておきましょう。

2022年11月7日現在のバージョンは5.12.6です。

 

■スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第2回)

 前回はウェブアクセシビリティのガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.0について説明しました。2018年に勧告となったWCAG 2.1では、新しく17種類の達成基準が追加されました。追加された達成基準は、認知あるいは学習障がい、ロービジョン(弱視など)、モバイル機器に対する配慮が中心となっています。スマートフォンの普及により、タッチやジェスチャーによる操作に対する配慮が必要になりました。新しい達成基準の一部を紹介します。

 

 

1.達成基準1.4.12:テキストの間隔(達成基準1.4.8:視覚的提示 を含めて説明)

 利用者がテキストを効率よく読むことができるようにするため、テキストの間隔を調整できるようにすることが求められます。また、その際にテキストが重なったり切れたりすることのないように注意する必要があります。

 視覚障がい又は認知障がいのある利用者にとっては、コントラストが低い場合にテキストの色及び背景色を選択できる必要があります。読字障がいまたは視覚障がいのある利用者にとっては、長い行のテキストを目で追うことは困難です。認知障がいのある利用者は、行の間隔が接近していると、テキストを目で追うのが困難です。そのような利用者に配慮するため、次の方法が示されています。

 ・行の間隔をフォントサイズの少なくとも 1.5 倍に設定することができる

 ・段落に続く間隔をフォントサイズの少なくとも 2 倍に設定することができる

 ・文字の間隔をフォントサイズの少なくとも 0.12 倍に設定することができる

 ・単語の間隔をフォントサイズの少なくとも 0.16 倍に設定することができる

 

なお、WCAG2.0において次の方法が示されています。

 ・利用者が前景色と背景色を選択できる

 ・幅が 80 字を越えない (全角文字の場合は40 字)

 

 

失敗例

 行の間隔を拡げることでテキストが重なってしまう


2.達成基準2.5.2:ポインタのキャンセル

 様々な障がいを持つ利用者が、意図せずタッチ又はマウスイベントを開始してしまい、望ましくない結果を招くことがあります。これを防止するには、アップイベントで動作させるという方法があります。

 

 アップイベントによる動作とは、ポインタが放されたときにターゲットが動作することです。タッチスクリーンにおいては、指がターゲットに触れ、その指が持ち上げられた場合にのみイベントが発生するようにします。マウスにおいても同様に、マウスボタンを放した場合にイベントが発生するようにします。利用者は、間違ったアイテムを選択していることがわかった場合は、ポインタまたは指を放す前に、ターゲットから動かすことで操作をキャンセルすることができます。

 


3.達成基準2.5.4:動きによる起動

 スマートフォンやタブレット端末などでは、振ったり傾けたり、カメラに向かってジェスチャーをすることで操作できる仕組みが用意されています。しかしながら、デバイスが固定されていたり、振戦(ふるえ)または運動障がいなどにより利用者が必要な動きを実行できない、あるいは誤動作させる場合があります。これらは別の仕組みによっても利用できるようにするとともに、機能をオフにできるようにしなければなりません。

 

 例えば、デバイスを傾けて次、又は前のページに進むことができる、あるいはデバイスを振るとダイアログが表示されて直前の動作を取り消すことができる機能などです。どちらも同じ機能を実行するためのボタンを提供するとともに、機能をオフにできる仕組みを用意します。

 


 次回は高齢社会に配慮したユーザーインタフェースデザインについて考えます。

 

■今後の予定案内

 R4年度共同研究会はあと1回の開催を予定しており、次回も1時間半のオンライン開催です。第1回(9月27日)取組状況と課題の共有、第2回(11月21日)外部コンサルによる取組事例紹介、と進め、第3回は千葉県内(身近な)自治体の取り組み事例(取組み方針や工夫したこと、継続課題として進めていること等)を紹介頂き、質疑応答を通し意見交換したいと思います。

 ・第3回共同研究会、2023年2月21日火曜15時~16時半

 ・千葉県内自治体の取組み事例・オンライン化事例紹介とディスカッション

共同研究会の準備を整え、2月初旬にはメールにて開催案内を発信させて頂きます。「ちば電子申請システム」から参加申し込みをお願い致します。

 

なお、R5年度も当研究会を継続する予定ですので、自治体DXに関して取り上げて欲しいテーマなどありましたら、事務局にご連絡ください。

よろしくお願いします。

 


■(参考)ITリテラシ向上サイト

下記はR3年度までの千葉県地域IT化推進協議会 ITレテラシ向上対策部会の活動として発行したメルマガをまとめたものです。参考にして下さい。なお、現在メルマガ発行は終了しています。

 

ITリテラシを高めよう! 


※本資料は共同研究会参加メンバーおよび協議会メンバーを対象に、千葉県が配信しております。

 

発行:千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会

     部会長:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 浅井 鉄夫

     事務局:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 加野 隆司

         電話 080-3425-8779 電子メール t.kano2005@gmail.com

     監事 :千葉県DX推進協議会 事務局 千葉県総務部 デジタル戦略課 島田 悟

 

次回発行予定 2023年2月