DXリテラシ向上対策部会 通信 Vol.4

発行:2023年2月28日

※本資料は、千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会の活動状況と参考情報を発信するものです。


目次

 1.共同研究会活動報告

 2.DX化事例紹介

 3.Vol.3 補足説明

 4.セキュリティ事故解説

 5.スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第3回最終回)

 6.今後の予定案内


■共同研究会活動報告

 2023年2月21日火曜15時より、R4年度第3回「行政手続きのオンライン化共同研究会」を29自治体82名の方に参加頂きZoom会議にて開催しました。今回は、県内自治体3市(市原市、柏市、千葉市)の方にご協力頂き、手続きオンライン化の取組み状況についてお話し頂き、意見交換を実施しました。まさに現場で苦労されているお話で、参加自治体の皆さんの参考になったことと思います。各講演ポイントは下記となります。

 

1.市原市におけるオンライン申請の普及に向けた取り組み(いや、正確にはもがき方)について

  市原市総務部情報政策課情報政策係 係⻑ 清田安信 様

  • 厳密な本人確認が必要な手続きは「ぴったりサービス」を、庁内手続きや押印などの本人確認が不要な簡易な手続きに「LoGoフォーム」を使用し、オンライン化の土壌作りと職員のデジタル化意識の向上を進めている。
  • 「ぴったりサービス」は、マイナンバーカードの普及状況、申請管理システムなど環境整備状況から、対応効果を見込んで進める予定である。
  • 他に、病院と連携した「親子手帳サービス」小児予防接種の予診票電子化、都市OS・デジタルコミュニケーション基盤(DCP)を活用し学校や地域(町会)と繋がるサービスに取り組んでいます。

2.できることから進めるオンライン手続き拡大への挑戦事例

  柏市企画部DX推進課 主事 ⻑⾕川和成 様

  • 本人確認にマイナンバーを使用するものは「ぴったりサービス」か「ちば電子申請サービス」を使用し、「ちば電子申請サービス」は、申請差し戻し、個別返信、帳票の送信の機能を活用している。簡易なものは「LoGoフォーム」、データ管理や複雑処理が伴うものは「kintone」で業務改善に繋げている。
  • 柏市はインターネット系パソコンをメインに業務を行っているため、環境にあったツールで手続きのオンライン化を進めている。
  • 今年度、改めて行政手続きの棚卸を行い、優先順位付けをしてR7年度までに半数の手続きのオンライン化を達成すべく進めている。
  • 手続きのオンライン化に際しては、既存の業務内容やフロー・ルールを見直すことが重要と捉え、ECRS(やめる、まとめる、入れ替える、簡素化する)を心がけている。

 

3.千葉市における手続オンライン化の取組

  千葉市総務局情報経営部業務改革推進課 主任主事 小嶋悠史 様

  • 千葉市は区制を敷いていることもあり、市長・区長もメンバーの行政デジタル化推進委員会で、庁内全体、オール千葉市として、大きな課題や方針を検討する推進体制をひいている。
  • オンライン受付手法としては、「ぴったりサービス」「ちば電子申請サービス」の利用を基本に、電子メールも活用し、押印の要否と合わせて受付方法を決めている。
  • オンライン化手続き数は約3割、その手続きでのオンライン利用率は約4割との状況だが、進まない要因を手続き所管と調査・課題整理し、課題解決策を進めていく予定である。
  • 今はまだ手続きオンライン化の過渡期であるため、紙の割合が多い。AI-OCR等を利用して、紙で受け付けたものも電子で受け付けたものも、データ化してシステムに取り込めるようにすることを検討している。
  • その他、そもそも添付書類が紙を前提にしていたり、手続きオンライン化の広報が所管ごとになっている等の課題への取組みも必要と考えている。

 

※詳細は、2/21共同研究会の配布資料および議事録を確認ください。

 

■DX化事例紹介

 自治体テレワークは、LGWAN(総合行政ネットワーク)を使ったテレワークのことで、皆さんもよくご存じのことと思います。

その普及率は2021年10月時点で、都道府県や政令指定都市ではテレワーク(在宅勤務)の導入率が100%となった一方で、市区町村での導入率は50%弱となっており、導入の予定がないという市区町村もまだ多いというのが現状です。

 

 今回は、さいたま市の事例をご紹介します。

参考にしたのは、行財政改革推進部が発行した「カイゼンニュース」というパンフレットです。URLを参考に書いておきましたのでご覧ください。

さいたま市の行財政改革推進部で実際にテレワークを初体験した方の体験談と、テレワークの取り組みを紹介しております。

 

1. 推進するテレワークの分類

  • 在宅勤務:自宅で勤務します。
  • サテライトオフィス:執務室以外の場所で勤務します。
  • モバイルワーク:出張先などでのすき間時間等を活用し、勤務します。
  • 特例在宅勤務:(緊急時の特例)自宅で勤務します。

 

2. テレワークの対象とする業務を整理

 ① 少しの工夫でテレワークが導入しやすい業務:

  統計資料作成業務、試験データの整理、成績書の作成、アンケート集計、

  照会結果の取りまとめ、受付データのデータ化、等

 ② ソフト・ハードの導入・改修等によりテレワークが導入しやすい業務:

  内外でのコミュニケーションに関する業務、現場での確認・調査・情報発信等を行う業務、

  災害対応や報道・議会対応など情報の迅速な伝達が求められる業務、専用ソフトや

  専用システムを使用する業務、秘密書に相当する機密性を要する情報資産を扱う業務

 ③ デジタル化等の進展に伴いテレワークの対象としうる業務:

  紙書類での申請・届出等への対応事務

 ④ 当面はテレワークの対象とするには課題がある業務:

  個人番号利用事務系システムを利用する業務、職場に設置された特殊な機器等の利用が必要な業務

 

 このように、さいたま市の取り組みは、誰にでもわかりやすく、自分でもできそうと思わせてくれる敷居の低さを感じさせているところが素晴らしいと思いました。

 

参考資料

 https://www.city.saitama.jp/006/007/014/007/p082734_d/fil/R3-1kaizennews.pdf

 

■Vol.3 補足説明

 部会通信Vol.3の「セキュリティ事故解説」において、Zoomのセキュリティ問題の改善状況を伝え、使い方の工夫をすれば、どんな場面でもZoom使用に問題ない、と受け取れるような表記をしてしまいましが、国からは「Zoomの使用は第三者の傍聴を前提に使用すること、情報の機密性管理上、機微な情報を扱う場合には別の会議システム「Webex」(*)を利用すること」という指針が出ているとのことです。

 

 Zoomに限らずWeb会議の利用に際しては、機微な情報を扱わないようにしたり、第三者の傍聴リスクへの対策を施す必要があります。機微な情報を扱う場合には、対面で行うとか、セキュリティ対策の厳重な環境で行うなど、セキュリティポリシーを各団体で定めて、活用頂きますようお願い致します。

 

 (*)「Webex」は エンドツーエンドの暗号化対策を行っており、第三者傍受がされにくい仕組みになっています(参照情報3)

 

参考情報:

  1. 国会議員と霞が関職員のミーティングに「Zoom」を導入 Web会議を本格化(2020年11月27日、ITmedia NEWS)
  2. 河野太郎氏が激怒「役所でZoomは制限」なのが中国リスクだけでない残念な事情(2022年9月30日、DIAMOND online)
  3. Webex のセキュリティと強力な暗号化 – Cisco
  4. Zoom、Cisco WebEX、TeamsをCASBでセキュリティで比較。結局Zoomは何が駄目?(2020年4月24日、YAHOO!ニュース)

■セキュリティ事故解説

 今回は、IPAの「地方公共団体のための脆弱性対応ガイド」についてご説明します。

資料は2012年3月に作成され、20ページのものとなっています。

以下にポイントを簡単にまとめますので詳細は文末のURLをご参照ください。

 

1. 情報システムを安全に使い続けるために理解すべきことについて 

  • 住民向けサービスの基盤として情報システムは必要不可欠なもの。
  • 情報システムは時間が経つと安全性が低下する。
  • 脆弱性とは、情報セキュリティ上の「弱点」「ほころび」だ。
  • 脆弱性対策を誤ると、市民の信頼を失う結果になってしまう。

2. 調査結果に基づく組織的な対応について

 調査はIPAが平成23年9月から〜12月に地方公共団体(情報セキュリティ部署)47都道府県、23特別区、786市に対して実施したアンケートをまとめたもの。

◇幹部の方向け:

 危弱性は突然見つかることがあり、突発的な対応が求められるため、予算や人的資源の柔軟な組み替えが必要となることを理解すること。

 

◇担当課(現課)の方向け:

 保有する情報システムに問題が発生した際の対処は、各担当課が担うことになる。情報システムの安全性は時間が経つと低下するので、脆弱性検査等の継続的な対策が必要です。委託業者との契約時の調整をはじめとして、IT担当課の情報提供・支援を受けるなどして脆弱性対策における問題を回避しやすくすること。

 

◇IT担当課(情報政策課)の方向け:

 脆弱性対策は、開発・運用事業者に一任することで解決するわけではない。脆弱性対策を進める上で、担当者の人事ローテーションは地方公共団体の共通の悩みです。脆弱性対策を円滑に実施するためには、情報システムを保有する各担当課とIT担当課との間の連携・情報共有が重要であること。

 

3. 脆弱性が見つかったときの対応について

  • 対策作業計画の策定とそれに基づいた対策の実施を行う。
  • 脆弱性情報の公開には、更なる攻撃等のリスクが伴うので、事前の十分な対策が必要です。
  • サービスをすぐに止めて、代替システムに切り替える事が出来ればベスト。

このように、セキュリティ対策は、担当者を決めるだけではなく、トップダウンで取り組まなければならないということがお分かりいただけたかと思います。

 

参考資料

 https://www.ipa.go.jp/files/000059718.pdf

 

■スマートフォン時代のユニバーサルデザイン(第3回最終回)

 最終回となる今回は、高齢社会に配慮したユーザインタフェースデザインについて考えます。高齢者の中には、デジタル機器に対して苦手意識や不安感を持っている人がいる一方で、積極的に利用している人もいます。これまでの経験から、若い人よりも利活用に長けている人もいます。しかしながら、加齢による脳や身体の衰えにより、若い人と同じユーザーインターフェースでは不便を生じることがあります。

  • 認知機能の低下: 記憶力の低下、物忘れ、言葉の出しにくさ、注意力の低下など
  • 運動機能の低下: 身体能力の低下、筋力の低下、運動協調性の低下など
  • 感覚機能の低下: 視力の低下、聴力の低下、触覚の低下など

これらの衰えには個人差がありますが、高齢者にとってデジタル機器を使うことが課題となる場合があります。

  • 画面が小さく見づらい。
  • 操作が複雑で、ボタンの意味がわからない。
  • 手順を間違えると、戻れなくなることがある。
  • セキュリティに不安を感じる。
  • デジタル機器に触れる機会が少ないため、使い方がわからない。

 これらの問題に対応するためには、高齢者に合わせた使いやすいデザインや、わかりやすい操作説明が必要です。実は、第1回、第2回で紹介したWCAG2.0が、高齢者のウェブアクセシビリティを確保するのに十分であるとされています。ただ、残念なことに、高齢者に必要と考えられるいくつかのガイドラインは、WCAGの3段階の達成基準レベルのうち、AAA(最高レベル)でしか見つかりません。そのため、デザイナーや企業にとっての優先度が下がり、加齢の影響を考慮したデザインができるように導かれていない現状があります。

 

 まず、視覚の衰えについて考えてみます。視力の低下や老眼により、画面に焦点が合いにくくなります。これはメガネを使い、画面の倍率を上げることで解決できます。しかしながら、高齢者の中にはその機能があることを知らずに、不便を強いられていることがあります。他にも、周辺視野が狭まり、人によっては中心視野が見えにくくなることもあります。色を識別する能力が低下し、白内障ではまぶしさを多く感じることになります。デザイナーが取り入れるべきデザインガイドラインの一部を紹介します。

  • シンプルなフォントファミリーを使用し、シンプルな背景を使用し、テキストを拡大できるようにする。
  • 不要な視覚要素を削除する。画面またはページごとに、ユーザーの行動を促す要素の数を1つか2つに制限する。
  • 効果的なグラフィカル言語(アイコン等)を作成し、それを一貫して使用する。
  • 色を控えめに使い、コントラストを調整可能にする。
  • ユーザーが見つけやすい場所に重要なコンテンツを配置する。
  • 水平スクロールが発生しないようにし、垂直スクロールの使用は最小限にとどめる。

 

 次に、認知の衰えについて考えてみます。認知機能の低下は、50歳よりもかなり早くの段階から衰退し始めると考えられています。たとえば、短期記憶の減少、長期記憶の低下、集中力の低下、マルチタスク能力の低下、空間記憶の減少、処理速度の低下、などが挙げられます。これらに対して、デザイナーが取り入れるべきデザインガイドラインの一部を紹介します。

  • デザインを単純化する。
  • ナビゲーション構造を単純化する。
  • ユーザーが集中できるようにする。気が散る要素を取り除き、現在のタスクを明示する。
  • 自分がどこにいるかを一目で分かるようにする。
  • ユーザーの記憶に負担をかけないようにする。例えば、現在のタスク名とステータスを常に明確に示すことで、作業記憶に過度の負担をかけないようにする、など。
  • 用語を統一して使用し、あいまいな用語を避ける
  • ユーザーを急がせないで、十分な時間を提供する。例えば、メッセージをタイムアウトさせない、再生速度を調整可能にする、など。
  • 学習と記憶をサポートする。例えば、ジェスチャーのやり方を見せる、タスクに必要なものをユーザーに伝える、など。

 これ以外にも、加齢に伴い低下する機能は多岐に及びます。しかしながら、年齢とともに機能が低下したとしても、デジタル機器のアクセシビリティを向上させることで、より多くの人が利用しやすくなります。ぜひ、みなさまのWebサイトやアプリでも、ユニバーサルデザインを目指してください。

また、デジタル機器に慣れていない高齢者に対しては、基本的な使い方を理解してもらうことが重要です。PC、スマートフォン、タブレットなどの機器の操作方法を教えることで、よりスムーズに利用できるようになります。高齢者がデジタル機器を利用する際には、初めからすべてがスムーズにいかないこともあります。家族や友人がお手伝いすることで、デジタル機器を利用する際の不安を取り除くことができます。

 お忙しい中、お読みいただきありがとうございました。

 

■今後の予定案内

 令和4年度共同研究会は、第1回(9月27日)取組状況と課題の共有、第2回(11月21日)外部コンサルによる取組事例紹介、第3回(2月21日)県内自治体の取組事例紹介、と進め一旦終了です。

 令和5年度も当研究会を継続し、自治体DXに関するテーマで、事例紹介や課題検討を進めていきたいと思います。研究会参加者アンケートでお聞きしました要望を整理しまして、次号Vol.5で研究会テーマ案を紹介させて頂きます。

 

なお、これまで発行しました部会通信は、「ITリテラシ向上サイト」に掲載しております。ITリテラシ向上の為の記事と合わせて参照ください。

 https://chiba-it-literacy-bukai.jimdofree.com/dx通信/

 


■(参考)ITリテラシ向上サイト

下記はR3年度までの千葉県地域IT化推進協議会 ITレテラシ向上対策部会の活動として発行したメルマガをまとめたものです。参考にして下さい。なお、現在メルマガ発行は終了しています。

 

ITリテラシを高めよう! 


※本資料は共同研究会参加メンバーおよび協議会メンバーを対象に、千葉県が配信しております。

 

発行:千葉県DX推進協議会 DXリテラシ向上対策部会

     部会長:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 浅井 鉄夫

     事務局:特定非営利活動法人 ITCちば経営応援隊 加野 隆司

         電話 080-3425-8779 電子メール t.kano2005@gmail.com

     監事 :千葉県DX推進協議会 事務局 千葉県総務部 デジタル戦略課 島田 悟

 

次回発行予定 2023年3月