翻訳サービス

翻訳サービスには、翻訳会社がオンライン上で受け付けているもの、翻訳者を紹介するもの、法人向けの有料の自動翻訳サービスなどもありますが、ここでは翻訳精度が急速に向上している原則無料の自動翻訳サービス・アプリに絞って紹介します。

 

機械翻訳の変遷

コンピューターを介して自然言語処理を行い、ある言語を別の言語に変換することを機械翻訳と言います。自動翻訳サービスは当然、機械翻訳によって提供されていることになります。

 

日本では1990年頃から機械翻訳が広まり始めました。当初は、登録したルールに基づいて構文を解釈して翻訳する「ルールベース機械翻訳」の手法が用いられていました。2010年頃からは、登録した大量の対訳データをもとに統計的手法により訳文を生成する「統計的機械翻訳」が採用され、徐々に翻訳品質の精度も良くなってきましたが、まだまだ実用性には欠けると言わざるを得ない状況でした。

 

2016年頃からは、人間の脳のニューラルネットワークを模して深層学習(ディープラーニング)を行う「ニューラル機械翻訳」の時代へと移り変わります。Googleが打ち出したニューラル機械翻訳システムは、統計的機械翻訳以上にナチュラルで正確な訳文の出力を実現しました。今では多くの翻訳サービスでこのニューラル機械翻訳が用いられており、翻訳精度が飛躍的に向上し、少しの編集作業でビジネスにも活用できる精度にまで到達しています。

深層学習を行うこのニューラル機械翻訳を「AI翻訳」とも呼びます。AIの進化とともに、機械翻訳の精度もますます向上することは間違いないでしょう。

 

携帯型の音声翻訳機

日本では2017年にソースネクストが「ポケトーク」と名付けた、50言語(現在は82言語)に対応する携帯型の音声翻訳機を開発・発売しました。今では類似の商品が多数出回っているだけでなく、スマホでも会話対応の翻訳アプリをインストールすることで音声翻訳機として利用でき、旅行や日常会話では十分に役立つツールとなっています。

いずれもサービス提供会社のサーバへのオンライン接続が前提ですが、中には接続できない時のためにオフラインでも使用できる機能を備えたものもあります。

 

 

PC向け翻訳サービス

ブラウザを使用して、文字(あるいは音声)でテキストを入力すると、即座に別の言語に変換してくれるというサービスで、代表的な「Google翻訳」を利用したことのある人も多いことと思います。

ネットでの評判を見ると、2020年3月に日本語と中国語にも対応した、比較的新しい翻訳サービス「DeepL」の翻訳品質の評価が高いようです。

サービス名 提供会社 言語数 特徴
Google翻訳  Google 108

言語の選択肢が多く、大体の国の汎用語に対応

テキスト入力すれば直ちに指定した言語に変換

PDFやWord、Excel、PowerPointなどのファイルを指定して、レイアウトを崩さずに文書の翻訳可能

Chromeブラウザに統合されていて、外国語のWebページをワンタッチで日本語に翻訳可能

翻訳の精度はDeepL翻訳、みらい翻訳に比べると劣ると言われている

スマホ・タブレット用のアプリあり(詳細後述)

Bing Microsoft Translator

(Bing翻訳)

Microsoft 101

MicrosoftのWeb上での翻訳サービス

言語の選択肢が多く、大体の国の汎用語に対応

翻訳精度は比較的高い

DeepL翻訳 DeepL

 26

2017年8月にサービス開始した新しい翻訳サービス

欧米の言語が主体で、アジアでは日本語と中国語のみ

(日本語と中国語には2020年3月に対応したばかり)

翻訳品質に定評あり

無料版は最大5000文字、1ヶ月最大3ファイルまで

オリジナルの訳文を登録できるカスタマイズ機能あり

WordやPowerPointなどのファイルを指定して、レイアウトを崩さずに文書の翻訳可能

Windows向けのDeepLアプリを無償で提供

みらい翻訳

(お試し翻訳)

みらい翻訳(NTT系)

 14

「みらい翻訳」は基本的には有料の法人向けの自動翻訳サービス

契約書などの法務文書や財務諸表などに強く、翻訳精度もかなり高い

無料版(お試し翻訳)は最大2000文字までの翻訳が可能

有料版では、PDFやWord、Excel、PowerPointなどのファイルを指定して、レイアウトを崩さずに文書の翻訳可能

NTTコミュニケーションズの有料サービス「COTOHA TRANSLATOR」も「みらい翻訳」と共通の仕組み

エキサイト翻訳 エキサイト   32

ポータルサイト「エキサイト」が2000年から提供する無料の翻訳サービス

英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語の日本語訳を中心に、主要30ヵ国語以上の言語に対応

最大2000文字程度まで

専門分野(理学系、農林水産系、工学系、社会学系、人文学系、芸術系、スポーツ系、生活系)の指定により翻訳精度が向上

印刷機能あり 

Weblio 翻訳

GRASグループ

(旧社名:

ウェブリオ)

 4

統合型オンライン辞書サービスの「Weblio」が提供する自動翻訳サービス

英語、中国語、韓国語の日本語訳(またはその逆)に対応

最大4000文字程度まで

URLを指定してWebページの翻訳もできる

英辞郎 on the WEB  アルク 英語のみ

英語の単語や慣用句を指定して、日本語訳や例文(とその意味)を返してくれるサービス

一般用語に加えて、経済、法律、特許、IT、医学やスラングまで幅広く収録されていて、例文も豊富

利用者登録で単語帳の作成可(英辞郎 on the WEB Pro Lite)

その他、ロシアの「Yandex Translate」、中国の「百度翻訳」などもあります。「Yandex Translate」は、画像ファイルをアップすることで、画像の中のテキストを翻訳する機能も有しています。

 

スマホ向け翻訳アプリ

アプリ名 提供会社 言語数 音声入力 画像入力 会話 特徴
Google翻訳  Google 108

様々な入力方式に対応

 テキスト入力、手書き入力

 音声入力、画像入力

リアルタイムカメラ翻訳機能

2ヵ国間の会話機能

音声文字変換(音声をリアルタイムに翻訳して文字で表示する)機能

オフライン対応:テキスト翻訳とリアルタイムカメラ翻訳はオフラインで利用可

英語、フランス語、スペイン語などの国別の訛りに対応

フレーズ集(単語帳)登録・参照機能

Microsoft翻訳 Microsoft 101

様々な入力方式に対応

 テキスト入力、手書き入力

 音声入力、画像入力

リアルタイムカメラ翻訳機能

2ヵ国間の会話機能

オフライン対応:テキスト翻訳とリアルタイムカメラ翻訳はオフラインで利用可

DeepL Translate

(iOSのみ)

DeepL

 26

   

DeepLのモバイルアプリは、iOS用のみでAndroid OS用は提供されていない

機能も現状はテキスト変換のみ

VoiceTra

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

 31

 

情報通信研究機構(NICT)が研究用に開発し提供中(誤り報告に期待)

旅行者の使用を想定して開発された翻訳アプリで、短い会話には特に強い

対応言語は比較的アジア各国に多く、北欧各国は少ない

ダウンロード数 600万超(2021年10月末現在)

話しかけると、翻訳してテキスト表示し、ボタンを押せば音声出力する

テキスト入力も可

Papago NAVER   13

様々な入力方式に対応

 テキスト入力、手書き入力

 音声入力、画像入力

リアルタイムカメラ翻訳機能

2ヵ国間のリアルタイム会話機能

子供向けの言語学習機能(Papago kids)

URLを指定してWebページの翻訳可

テキスト翻訳はオフラインで利用可

LINE通訳機能

LINE

5

 

LINEトークを自動的に翻訳する機能

LINEの公式「xx語通訳」アカウントを「友だち」登録すると使用できる

対応言語は、英語、韓国語、中国語、中国語(繁)と日本語

最大文字数は900文字程度

その他にも、

  • iTranslate翻訳            Apple Storeでの人気の翻訳アプリ
  • スキャナ&翻訳+写真翻訳者       写真翻訳アプリ
  • 画像翻訳+カメラスキャナ写真翻訳機   写真翻訳アプリ
  • 翻訳王Pro              写真翻訳アプリ
  • Worldictionary            かざすだけで翻訳
  • セカイフォン              話した言葉をリアルタイム翻訳
  • ボイス翻訳               音声対話型翻訳アプリ

など、それぞれ特徴のある翻訳アプリが多数あります。ただし無料のものは制約が厳しかったり、アプリ課金されたり、いつの間にか有料に切り替わったり、ということがあるようですので、ご利用にあたっては充分気をつけてください。